アポロ計画以来の有人月探査に利用する米大型ロケット「SLS」初号機は、打ち上げ延期が続いている。先月末の主エンジンの温度異常に続き、今月3日の作業では燃料の注入時に漏れが発生した。原因究明などのため、米航空宇宙局(NASA)は打ち上げ可能期間だった6日までの挑戦を断念。来月にずれ込む公算が出てきた。SLSには無人試験飛行の宇宙船「オリオン」に加え、月面を目指す日本の超小型機「オモテナシ」などが相乗りしている。
SLSは米フロリダ州のケネディー宇宙センターで日本時間4日午前3時17分の打ち上げを目指したが、約7時間前、燃料の液体水素を1段機体の燃料タンクに注入する作業で、配管と機体の接続部に漏れが判明した。3回にわたり修復を試みたが失敗し、延期を決めた。
NASAによると、マイナス253度の液体水素を燃料タンクに注入するのに先立ち、配管や推進システムを冷却しておく必要がある。この際、誤ってシステム内の圧力を上昇させるコマンドを送ってしまったという。これが水素漏れの原因となったのかどうか、調査を進める。機体は安全確保の規定に沿い、いったんロケット組立棟に戻す。
打ち上げが予定された先月29日には、主エンジン4基のうち1基を冷却できなかったため、作業手順を変更し、今月4日に延期していた。さらなる延期を受けNASAのビル・ネルソン長官は、4回延期した自身のスペースシャトル搭乗経験に触れながら「われわれは準備ができたら行く。宇宙計画では、延期はあり得ることだ」と述べた。
今後の打ち上げ可能期間は米東部夏時間19日~来月4日、17~31日と続く。ただ、SLSの39B発射台に隣接する39Aでは、若田光一さんらが国際宇宙ステーション(ISS)に向け搭乗する「クルードラゴン」5号機の打ち上げを、同3日に控える。ネルソン氏はこれに触れ、SLSが来月中旬にずれ込むとの見方を示した。
SLSは2011年に廃止したシャトルの後継機で、正式名称は「Space Launch System」。オリオンを搭載して25年にも有人月面着陸を再開し、20年代に月上空に基地「ゲートウェー」を建設する。着陸は遅れるとの見方もある。「アルテミス」と呼ばれる一連の国際月探査計画に日本も参画し、30年頃の日本人月面着陸を目指している。
2段式で、初号機は全長が98メートル、重量が燃料込みで2600トン。打ち上げ能力は月遷移軌道に27トン。当初は2017年に打ち上げが計画されたが、開発が難航し延期を重ねている。初号機は能力の余剰を利用し、オモテナシと、軌道制御技術を試験する「エクレウス」の日本の2機を含む、10機の超小型実証機も搭載している。
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