丸三海運、アイディア、スカパーJSAT、日本無線、NTT-WEマリンは9月5日、内航海運業界における課題解決に向けた運航効率化や労務環境改善、海上輸送事業での高付加価値創出の実現に向けて、海上で途切れない高速通信とそれにより発揮される内航船舶のデジタル化の評価のための実証実験を行うことで合意したと発表した。
今回の実証実験は、運航会社と通信サービス事業者、舶用機器メーカーおよびシステムベンダーの5社が相互協力し、定期航路で運航中の内航コンテナ船で、実用的かつ実効的な運航業務改善や荷主向け付加価値創出が実現されるよう各サービスの評価および最適化を行うもの。また今回の実証実験で得られる成果をもとに、内航海運業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けたサービスのパッケージ提供体制をベンダー各社間で構築していく考えだという。
具体的には、スカパーJSAT、日本無線およびNTT-WEマリンが協力し、沿岸域で通信が可能なLTE回線サービス「マリタイムモバイルA-Ⅱ」とLTE回線エリア外でも通信が可能で内航船向けに特化したVSAT衛星回線サービス「JSATMarine Light」を組み合わせ、大阪―沖縄航路において途切れない通信環境を整備するという。
また、丸三海運が運航する大阪―沖縄航路コンテナ船「島風」に導入されているアイディアの船舶の運行管理をデジタル化する「Aisea PRO」を大阪―沖縄間の途切れない通信状況下で運用することで、陸上管理者は常にリアルタイムの船舶情報を把握することが可能になるという。
これまで通信ができない状態下では、予測に頼ったり、事後データを扱ったりする必要があったものが、リアルタイムデータを扱うことにより運行効率の向上や高付加価値の創出といった観点で効果が期待できるという。
運行効率の観点では船舶のポジションや動静連絡、カメラ映像、船員労務データが、また、高付加価値の創出の観点ではリーファーコンテナのステータス管理が、効果として挙げられている。
なお、今回のVSAT衛星回線利用にあたっては、米国Kymeta Corporation製の平面アンテナ「Hawk u8」が日本無線によって設置される予定であり、スカパーJSATの「JSATMarine」サービスにおける平面アンテナ採用にむけた技術検証も行われる予定だという。