アストロバイオロジーセンター(ABC)は9月2日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測枠「初期公開科学(ERS)プログラム」の1つである「JWSTの高コントラスト機能を開拓するプログラム」において、その高コントラストERSデータに基づく系外惑星の直接撮像画像がNASAから公開されたことを発表した。
同成果は、英・エクセター大学のサーシャ・ヒンクリーをはじめとする国際研究チームによるもので、ABC所属の研究者2名も同プログラムに参加している。
今回撮影された画像は系外惑星「HIP65426b」を波長3~15μmで観測したもの。JWSTに搭載された近赤外線カメラ「NIRCam」と、中間赤外線カメラ「MIRI」により取得された(背景画像は、地上の可視光で撮影された全天の天体のデジタルカタログから抜粋されたもの)。
HIP65426bが巡る中心星HIP65426の明るい光は、JWST望遠鏡の高コントラスト観測機能(コロナグラフ)で除去されており、その近くにある同惑星がすべての波長で撮像された。波長5μm以上の赤外線で系外惑星が撮像されたのは今回が初めてであり、JWSTが系外惑星の高コントラスト観測にも有効なことが証明されたという。また、今回のデータから、この惑星の質量は木星の約4倍、温度は摂氏約2000度であることが示されたと研究チームでは説明している。
口径8.2mのすばる望遠鏡を用いたSEEDS(シーズ)プロジェクトでも系外惑星の直接撮像に成功しているが、地球大気・望遠鏡などによる熱放射の影響が大きいため、観測波長は主に2μm以下に限られていた。一方、惑星大気の研究などには、なるべく広い波長範囲での観測が重要になり、とりわけJWSTが得意とする3μmより長い波長での観測は貴重だという。
なお研究チームでは、地上望遠鏡では観測が困難な系外惑星や褐色矮星(惑星と恒星の中間の天体)の赤外線の高コントラスト観測において、JWSTは新たな地平線を開拓することが期待されるとコメントしている。