リコーからなぜウェアブランドが!?
リコーの新規事業創出に向けたアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」から、またもおもしろい取り組みの本格展開が開始される。
エスニックウェアブランド「RANGORIE(ランゴリー)」だ。
TRIBUSは社内外からイノベーターを募り、リコーのリソースを活用しイノベーションにつなげるというプロジェクト。これまでTRIBUSからは、アートプロジェクト「StareReap」や発話音声をイラスト化するビジュアルコミュニケーションシステム「piglyph」、立体投影装置「WARPE」といったさまざまな取り組みが生み出されてきた。
それらとは少し毛色が異なるアパレル業界への展開となるRANGORIEだが、なぜアパレルなのだろうか。
メディア向け展示会を行ったリコーのTRIBUS推進室、RANGORIEプロジェクトリーダーの綿石早希氏にお話を伺った。
インド国内の工房を立ち上げ、女性の仕事をつくることを目指す
RANGORIEの始まりとなったのは2009年。BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスに向けてインドに調査に行っていたリコーの江副亮子氏が、女性の下着の粗末さや、女性が働く習慣がなく、女性用下着を男性が売っていることに驚いたことが始まりとなった。
そこで、インド女性に向けた下着づくりをインド国内で行うという構想が生まれた。しかし、まずは販売場所の確保と女性の就労支援として、インド農村部の貧困削減をミッションとしているNGO「DRISHTEE」とともに女性オーナーが女性用日用品を販売する店舗を立ち上げた。なんと、現在では70店舗まで拡大しているという。
そして2019年に「ビジネスを通じて女性の地位を向上させたい」と考えていた綿石氏と「インドで下着をつくりたい」と思っていた江副氏が出会い、TRIBUSに応募したことで、インド人女性に向けた下着づくりの構想が動き出す。
2020年に、事業化に向けTRIBUSに採択され、自分にフィットしたおしゃれな下着を自由に選ぶことができる買い物体験をインド人女性に提供しながら、インドの農村部に下着をつくるという雇用を創出し、女性の地位向上に貢献することを目指すアパレルブランドとしてRANGORIEは動き出した。
インド農村部で下着生産を行い、インド国内で下着を販売する体制の構築を目指していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航が制限されたことから難航した。
そこで、まずは日本での市場調査も兼ね、オリジナルデザインのインドの伝統柄の下着やヨガウェアを生産し、販売するとともに、インド国内の工場の立ち上げを目指すことにしたという。2022年3月8日より、日本国内でオンラインストアも開設している。
綿石氏「リコーと下着は一見つながりがないように見えますが、下着や水着を販売する三愛(ワコールに事業譲渡済み)は、リコーの創業者の市村清が女性の社会進出を見込んで立ち上げた事業なのです。
また、リコーは布へのプリント技術も持っていて、その技術を用いて柄をプリントしているものもあります。」
現在は、日本の工場での生産が主だが、インドでの生産のトレーニングはリモートで続けており、9月よりインドの工房での本格的な生産が始まる予定だ。インドの工房で作られた製品は、インド国内のみならず、日本でも展開する計画だという。
また、インドの工房の立ち上げ準備中も、DRISHTEEが行っている女性の機織り職人育成プロジェクトに発注し、スカーフを販売している。
いよいよインドの工房での生産が始まるRANGORIEの製品だが、綿石氏は「今年度中にインドでの販売開始までを視野に入れています。インドで作ったものをインドで展開していき、これをモデルケースにして、工房の数を増やしていきたいですね」と今後の展望について語った。