企業がロボットを導入する目的は、生産性向上による自動化やコロナ禍での省人化など多種多様です。ロボットを導入するにあたっては、現在直面している課題を洗い出し、その課題を解決できるロボットを選定し、ロボットが実際に目的通りに稼働するか実証実験を行い、問題なければ本番稼働、そして台数や稼働場所を拡大していくといった手順を踏みます。

  • ロボットの導入フローと課題

現在ロボット導入を検討されている多くの方は、上図の「(1)現状の課題整理」「(2)PoC:実証実験 のフェーズが多く、『業務をロボットで代替えできるかどうか』」「ロボットを導入することで ROIをクリアできるか」を検討されています。しかし、今後「(3)本番導入」「(4)拡大展開」のフェーズに移行すると、業務を解決するために導入した「ロボット自身の課題」の解決が必要になります。

具体的な4つの「ロボット自身の課題」

ロボット自身の課題としては、次の4つがあると考えています。

  • ロボット間/他システムとの相互連携の問題
  • ロボットが接続するネットワークの問題
  • ロボットのセキュリティの問題
  • ロボットの運用の問題

以下、それぞれの問題について見ていきましょう。

ロボット間 / 他システムとの相互連携

現在のロボットは特定の作業や用途において設計されていることが多く、1台でさまざまなタスクをこなせるわけではありません。一方で自動化や省人化を実現するには、1種類のロボットだけではなく、異なるベンダーの異なるタイプのロボットを組み合わせることで大きな効果を得られます。また、ロボット同士だけでなく他のシステムとの連携が必要になります。

例えば、館内を走行するロボットであれば、セキュリティゲートやエレベータ、倉庫などの自動化であれば WMS(Warehouse Management System)などとの連携です。ここで重要になるのが、ロボット間、ロボットとシステム間をつなぐAPI、およびプラットフォームです。米国シリコンバレーのスタートアップの一社であるInOrbit社は、Developer Portalという、API や SDKなど ノーコードでロボット、他システムを繋ぐための機能を提供しています。

ロボットが最大パフォーマンスを発揮するための最適なネットワーク

ロボットは常に自分の状態を共有し、コントローラーからの命令をリアルタイムに受けとる必要があるため、常時ネットワークにつながっていることが前提となります。これにより、ロボットが最大のパフォーマンスを発揮することができます。

このロボットがつながるネットワークは、ロボットの種類や環境によって求められる要件が異なり、ネットワークの構成も大きく変わってきます。産業用ロボットの場合、高い信頼性とレスポンス性能が求められるため、遅延は許されません。これを実現するために「フィールドネットワーク」という標準的な考えがあります。

一方で、最近台頭してきたサービスロボットにおいては、産業用ロボットほど要件が明確化されず、ネットワークにつながれば良いという考えが多くなっています。特に動き回ることが前提であるロボットの場合、正しく無線の設計が行われないとハンドオーバーがうまく行われず、通信断が発生しロボットの停止したり、正しく命令が伝わらなかったりする可能性があります。

また、ロボットに最適なネットワークを実現するには、「ITネットワーク」と「OTネットワーク」の両方の知見が必要になります。ロボットの世界でもエレベータ管理等のビル管理にOTネットワークが利用されています為この両方のネットワークの特性を十分理解する必要があります。

  • ロボットにとって最適なネットワークのあり方

ロボットに特化したセキュリティ

ロボットがネットワークにつながるということは、それだけ攻撃のリスクにさらされる危険性が高まります。また、今後 「ロボット」 と 「IoT」の融合による「Internet of Robotics Things」 として、動き回る高性能なセンサーと化し、現実世界のさまざまなものをセンシングすることになります。これにより、さらに機密性の高い情報を収集することが可能になる一方で、これらの重要なデータを狙ったロボットへのハッキングリスクが膨らみます。

特に、人と共存するサービスロボットは、人と近い場所で動いています。これは、IT機器がサーバルームに置かれているのとは違って、例えばUSBポート等に物理的にアクセスされる危険性があることを意味しています。また、データを搾取されるだけでなく、ロボットが乗っ取られてしまうと、人に危害を加えてしまう可能性も出てきます。

では、ロボットに対してどういったセキュリティを提供すればよいのでしょうか。ロボットも ICTと同じように、脆弱性検査・リスク分析、ロボットに特化したセキュリティ対策、そして運用が必要になってきます。

スペインに本社を置くAlias Roboticsのように、ファイアウォール、アンチウイルス、データ暗号化など、ロボットに特化したエンドポイント・プロテクション・プラットフォームを提供するスタートアップも現れています。このようなロボットに特化したセキュリティ対策を全体のセキュリティ提供プロセスに組み込んでいくことが必要となるでしょう。