TrendForceによると、インフレによる世界経済の減速が消費者の購買意欲を減退させ続けており、年末まで改善しないことが予想され、NANDの供給過剰が悪化していることなどもあり2022年第3四半期のNAND価格の下落率は以前の予測の前四半期比8~13%減から、同13~18%減に拡大しているという。また、NANDサプライヤ各社の生産能力計画が縮小されない場合、価格下落は第4四半期も続く可能性があるという。
クライアントSSDについては、教育用ChromebookやノートPCの出荷見通しが引き下げられており、PCメーカー各社がNANDの発注を減らしているという。また、価格下落の背景として、176層採用製品の供給拡大と、176層QLC SSDのコスト最適化があるほか、中YMTCの低コスト製品が2022年後半に多くのノートPCに採用される見込みであり、価格下落幅は同10~15%減へと拡大すると予測している。
エンタープライズSSDは、グローバル経済の減速に伴ってエンタープライズ市場からの需要も低下、中国のクラウドサービスプロバイダからの注文が改善されていないという。また、期待される次世代サーバプラットフォームの出荷も遅れており、2022年下半期のエンタープライズSSD市場は、上半期比でより暗いものになるとしている。
サプライヤ各社は、コンシューマ向けNANDの平均価格が比較的低く、需要見通しも悪いため、エンタープライズSSD向けの出荷を増やすことで収益の拡大を目指しているが、バイヤーも少なくとも2023年第2四半期までは価格が下落し続けることを期待しているため、第3四半期における契約価格の下落率は、同10~15%減となるものと推定されている。
eMMCは、Chromebookの需要低下に加え、TV関連も年間を通じて低調になっている。ネットワーク関連は比較的順調だが、それだけで他の低調な製品で生じた需要のギャップを埋めることは困難である。そうした背景から在庫リスクが依然として高いため、バイヤーは第3四半期の目標として在庫削減を掲げており、結果としてeMMCの価格は下がり続けているという。
UFSは、主要な製品アプリケーションであるスマートフォン(スマホ)市場向け需要が低調であり、中でもSamsungと中国ブランド各社は在庫削減に注力しており、新規スマホの出荷目標についても保守的だという。そのため、2022年下半期のUFS市場は依然として悲観的で、バイヤーの在庫管理の徹底が続いているため、さまざまなレイヤでの値引きが進んでおり、結果として、同四半期のUFS契約価格は同13~18%減と、事前予測よりも拡大するとしている。
そしてNANDウェハについては、端末需要の見通しが低迷していることや、モジュールメーカーの少量仕入れ戦略が継続していることから、好転の兆しがなく、依然として値下げが続いているという。そのため同社でも、需要の見通しが改善するまで、ウェハの相場は 2022年下半期に四半期ごとに下落し続ける見込みとしている。一方でYMTCの新たな製造施設が稼働を開始したほか、Samsung、SK Hynix、Micron Technologyの大手3社も生産能力計画と技術ロードマップに変更はない。TrendForceによると、在庫圧力が高まる中、サプライヤ各社ともに心理的にはNAND価格の下落と利益の減少を受け入れる準備を進めているという。