ソフトバンクは7月28日~29日、法人向け年次イベント「SoftBank World 2022」をオンラインにて開催した。「ニッポン、変えテク。テクノロジーで、この国のビジネスに革新を。」をテーマに掲げた同イベントには、官民学さまざまな分野から有識者が登壇し、さまざまな切り口からDX推進の取り組みが語られた。
本稿ではその中から「人財、変えテク。~官民の現場から探るDX実装に向けた人財戦略~」と題して行われたパネルディスカッションの模様をダイジェストでお届けする。
自治体が進めるDX - 宮崎市役所の場合
官民の現場においてDXリーダーとして活躍する人物を招聘したパネルディスカッションには、宮崎市長 清山知憲氏、アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 マネジング・ディレクター 本徳亜矢子氏、パーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 本部長 朝比奈ゆり子氏、ソフトバンク 常務執行役員 法人事業統括 副統括 藤長国浩氏が登壇。ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター & シニア・パートナー 杉田浩章氏がモデレーターを務めるかたちで進行された。
さまざまな企業や自治体がDXの実装フェーズを迎える中、いずれにおいても喫緊の課題となっているのが「デジタル人材不足」だ。2021年に政府が発表した「デジタル田園都市国家構想」では、官民双方で地方におけるDXを積極的に推進することが掲げられているが、ここでもやはりデジタル人材の育成・確保が取り組みの1つとして挙げられている。
では実際に、自治体はどのように動いているのか。清山氏からは、宮崎市の取り組みについて語られた。
今年2月に宮崎市長に就任した清山氏は、まず市役所職員の考えを知るために、職員アンケートを実施した。中でも働き方改革に関する調査では、「デジタルによる業務効率化」に高い期待が寄せられていると同時に、最も「実施されていない」と感じられていることが浮かび上がってきた。
就任以前、民間の医療機関で電子カルテなどデジタルを駆使した在宅医療に携わってきた清山氏は、「自治体は民間に比べ、DXから程遠いと思っている」とした上で、「宮崎市役所も変わらなければいけない」と力を込める。
現在、宮崎市役所では市役所改革の“柱”として生産性を掲げ、これをデジタル化とその先にあるデータ活用、DXによって実現するとしている。また現在、老朽化した庁舎の建て替えを議論していることもあり、これを機にデジタル化を進める上で適したレイアウトなども検討しているという。
さらに、市を挙げてデジタル化を推進していくことを明示するために、7月7日には「宮崎市デジタルチャレンジ宣言」を発表した。同宣言では、「市民」「地域」「市役所」の3つの分野において、デジタル技術を最大限に活用し、市民一人一人が豊かに暮らせる町づくりを推進することが表明されている。
取り組みを進める上で、やはり宮崎市でもDX人材の不足が課題となった。そこでまずは外部の力を借りることを選び、特定任期付き職員として最高情報統括責任者(CIO)補佐官を公募。今年5月に総務部参事(デジタル化推進担当)として配置され、DX推進事業の方針策定や、施策の企画・実施、人材の育成・研修を担う。
「この取り組みはまだ始まったばかりですが、しっかりやっていきたいと思っています」(清山氏)
企業のデジタル人材育成状況は?
続いてアクセンチュアの本徳氏から、官民の民の動きとして企業のデジタル人材育成の状況について語られた。同氏によれば、デジタル人材育成の進度は大きく3つのステージに分かれている。
ステージ1は「必要性は感じているが、まだ着手できていない」段階、ステージ2が「育成プログラムの導入や人事制度の刷新を進めているが、結果が出ているのかどうかはわからない」段階、ステージ3が「自社人材が成長戦略を似ない、一定の成果が出始めている」段階だ。そして、多くの企業はステージ2にあるという。
「人材育成の取り組みは、簡単なものではありません。アクセンチュアでは、人材育成で陥りがちな罠として『研修の罠』『ON&OFFの罠』『モチベーションの罠』『キャリアの罠』『カルチャーの罠』『データの罠』の6つを挙げています。これらの罠は社内に潜んでいるものであり、経営層から現場の社員まで全ての足下にあるのではないかと考えています」