東邦大学医学部リハビリテーション医学研究室の大坪優太レジデント、宮城翠助教、同医学部口腔外科学研究室の関谷秀樹准教授、同医学部内科学講座神経内科学分野の狩野修教授、東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻機能医科学講座内部障害学分野の海老原覚教授らの研究グループは、同グループが考案した味覚リハビリテーション法により、健常者の味覚感受性が向上することを確認した。
これにより、今後味覚障害患者に対する新たな治療法として、味覚リハビリテーション法の確立が期待されるとする。なお、同研究成果は2022年8月16日、「Scientific Reports」にて発表された。
味覚障害の症状を持つ患者数はこれまで高齢化とともに増加していたが、近年はCOVID-19の感染後に味覚障害が残存する患者がいることが報告されており、今後世界的にも味覚障害患者の増加が危惧されている。しかしその一方で、味覚障害に対する明確な治療法は確立されていない。
そこで大坪氏らの研究グループは、味覚障害の新たな治療法として味覚リハビリテーション法を考案。健常者を対象にその効果検証を行った。
味覚リハビリテーション法は、4つのステップからなる治療法。ステップ1では、味覚検査方法の1つである濾紙ディスク法により味覚認知しきい値を計測し、ステップ2で味覚認知しきい値より1つ濃い濃度の味を記憶させ、味覚認知しきい値の味と照合させる。ステップ3では味覚認知しきい値より1つ濃い濃度の味を記憶させ、味覚認知しきい値より1つ薄い濃度の味と照合させる。ステップ4で味覚認知しきい値の味を記憶させ、味覚認知しきい値より1つ薄い濃度の味と照合させることで、一連のサイクルが完了する。
今回の研究では、対象となる42名の健常者を21名ずつの2群に分け、一方を味覚リハビリテーション法を実施する群(リハ群)、もう一方を味覚リハビリテーション法を実施しない群(非リハ群)とし、実験が行われた。その結果、甘味・塩味・酸味・苦味の4つの基本味すべてにおいて、リハ群では経時的に味覚の感受性が優位に高まったという。
また、両群の実験開始時の味覚認知しきい値に有意な差は見られなかったものの、実験4日目の時点で、リハ群は非リハ群に比べ優位に味覚感受性が高まったとのことだ。
このことから大坪氏らは、味覚リハビリテーション法は味覚感受性を向上させることがあることが示されたとし、味覚障害に対する治療法の1つとなることが期待されるとしている。