名古屋大学(名大)は8月23日、革新的衛星技術実証3号機の実証テーマの1つとして、2022年10月7日に内之浦宇宙空間観測所から宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット6号機によって打ち上げられる予定の4.4kgの超小型衛星(キューブサット)「MAGNARO(MAGnetically separating NAno-satellite with Rotation for Orbit control)」を公開した。

また、同衛星は2機に分離すること、エンジンや燃料を一切用いず、地球磁場やわずかに存在する空気効力などを用いて姿勢制御や編隊形成を行うということも併せて発表された。

開発は、名大大学院 工学研究科の稲守孝哉准教授らの研究チームによるもの。また今回の研究は、2020年度から始まった科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(育成型)「超小型衛星における回転分離を用いた編隊形成と宇宙実証機の研究開発」の支援のもとで行われた。

近年、複数の衛星を連携させて1つのミッションを行う、「コンステレーション」や「フォーメーションフライト」といった編隊飛行による新しい宇宙利用が増加している。その際に重要となるのが、複数の衛星の相対位置を調節する軌道制御技術だという。

従来の考え方では、宇宙環境による外乱の影響を受けやすい小型衛星において、エンジンなどの軌道制御機器が必須とされてきた。しかし、小型衛星は複数機の開発や打ち上げが比較的容易という大きなメリットがあるが、電力、質量、スペースの制約が厳しく、すべての小型衛星でエンジンを搭載できるわけではない。

そうした中で、稲守准教授らは宇宙環境からの外乱を抑圧するのではなく、その外乱の特性に着目することにしたという。その理解を深めることで、むしろ宇宙環境を利用して衛星の編隊を形成し維持する、という新しい発想をもって研究を進めてきたとする。そして今回、革新的衛星技術実証3号機のうちの1機として、これまでの研究成果を軌道上で技術実証するため、MAGNAROが開発された。