職業別電話帳として知られるタウンページ。そのデータを集約した「タウンページデータベース」は商材としても提供されている。だが、昨今は固定電話の減少が著しい。そんな状況の中、タウンページデータベースは新たな付加価値を加え、より魅力のあるソリューションへと変わろうとしている。
タウンページデータベースとは?
職業別電話帳として多くの人に愛されてきたタウンページ。ハローページ(50音別電話帳)とともに定期的に配布されていた、分厚い黄色の電話帳を覚えている方は多いはず。だが、携帯電話やインターネットの普及、個人情報保護などさまざまな背景から需要は減少し、ハローページは2021年10月以降発行・配布する最終版をもって終了する。
しかし、仕事で使われるタウンページはまだまだ健在。Webサービス「タウンページライブラリー」からは、全国のタウンページを閲覧することもできる。だが、その情報は別の形でも提供されている。それが、個人商店から大企業まで約600万件(※2022年3月時点)の情報を網羅した「タウンページデータベース」だ。
NTTタウンページは、この「タウンページデータベース」を34年ほど前から商材として取り扱っている。これまでは主に自動車メーカーのカーナビゲーションや、警察の110番通報における通信指令台で採用されてきた。また、その他に営業リスト、顧客データベース構築、商圏分析などにも活用されている。
だが昨今はデータの使われ方が変化してきており、より多方面から需要があるという。たとえば、販売活動拡大のためのマーケティング分析に利用するというケースだ。「タウンページデータベース」はどのような可能性を秘めているのだろうか。その価値について、NTTタウンページの丸 伸一郎氏、三上 郁夫氏に伺っていきたい。
「豊富な業種分類」「網羅性の高さ」「情報更新の速さ」がウリ
『タウンページデータベース』は、NTT東日本と西日本が発行する職業別電話帳をデータベース化したものだ。過去34年間のデータベースをアーカイブとして保管しており、過去と最新のデータベースを比較分析できる統計情報も保有。新設された会社の情報や移転、廃業店舗情報は、毎月更新によって鮮度が維持されている。
「電話帳に掲載を希望される方には、掲載前に我々のコンサルティングセンターから事業内容をお伺いしています。そして大分類の『基本64分類』、小分類の『NTT分類(約1,900種類)』の中から最適な業種分類区分を行います。簡単に言えば、『飲食店に載せますか、そば店に載せますか』とお聞きしたり、逆に提案したりしながら電話帳掲載をしている状況です」と丸氏。
世の中にある企業データベースの中でも、タウンページデータベースは「豊富な業種分類」「網羅性の高さ」「情報更新の速さ」が特徴だという。
「タウンページデータベースの強みは、その1年間で衰退する業種や新設する企業を把握できることだと思います。紙の電話帳には発行周期があるので、電話をかけても閉店している可能性もあるわけです。しかしタウンページデータベースは月ごとに抽出をかけていますので、確実に、最新の情報を手に入れることができます」(丸氏)
なお、総務省統計局による事業所数統計調査の件数はおおむね500万件。タウンページデータベースは掲載の仕組み上、重複掲載されるケースがあるため事業所数で見るとこれより少なくなるが、国の調査報告書に近い数の企業が掲載されていることが分かる。
また、タウンページへの掲載で得られる情報とは別に、世の中に公開されている情報を元に独自に収集したデータもあるという。これもデータベースに蓄積されており、約200万社のデータがあるそうだ。
「ただし、タウンページデータベースに掲載されているのはあくまで基本的な情報です。現在NTTタウンページでは、この基本的な情報に代表者名やURLなどの付加価値情報を組み込んだり、毎日情報を更新したりして、価値を向上させる取り組みを行っています」(丸氏)
付加価値情報を組み込むことで生まれる新しい価値
「タウンページデータベースは、あくまで電話回線と紐付いた情報です。ですが、昨今は固定電話が減少傾向にあります。当然ながらデータの総数もどんどん減っていくわけです。このままではデータベースの価値が下落してしまいますから、我々としても手を打たねばなりません。そんな施策の一つが、前述した公開情報からのデータ収集であり、また付加価値情報の付与です」(三上氏)
タウンページデータベースに付加価値情報を組み込むという取り組みは、2018年からスタートした。その項目数は28項目にも及び、代表者の氏名や従業員数、資本金など会社の規模がわかる項目から、顧客向け店舗がある場合は席数や駐車場の有無、クレジットカード使用可否などの項目も保有しているという。
「基本的なデータではわからなかった企業規模が推測できることで、使い方の幅は広がっていると思います。さまざまな用途がありますが、マーケティング分野におけるセグメンテーションにおいては、とくに有用ではないかと考えます」(三上氏)
近年は、タウンページデータベースと他社のデータベースを組み合わせて価値を生み出そうとする企業も増えているという。直近では、人流情報であるNTTドコモの基地局データと、施設情報であるタウンページを組み合わせて使った例があるそうだ。
毎日データを更新するダイナミックタウンページデータベース
現在、タウンページデータベースは顧客の要望の高度化に応じ、従来は年6回提供(2カ月ごと)だった基礎データの提供を、年12回(1カ月ごと)に提供している。
だがリアルタイムで施設を確認したいという顧客が増加したため、毎日データを更新してオンラインで提供する仕組みを開発。新たに「ダイナミックタウンページデータベース (DynamicTPDB)」として提供しているという。これと合わせて、新たにAPIを構築し、よりシステム連携も容易になった。
「日本は自動車メーカーの技術力が非常に高く、そこで求められる情報のスペックも非常に高いのです。たとえば『カーナビに従って施設に行ってみたら、もうなかった』なんていうのは御法度です。開・閉店した施設情報をどこよりも早く反映し、誘導したいというのが、ダイナミックタウンページデータベースを開発したそもそものきっかけです」(丸氏)
もちろん、鮮度の高い情報はあらゆる面で有用だ。自動車メーカーを想定して開発されたダイナミックタウンページデータベースだが、新しくできたお店にいち早くアプローチしたいという思いは、多くの企業に共通するだろう。
「付加価値情報と日々連動のデータを組み合わせることで、さまざまな可能性が生まれると思います。たとえば、駐車場の混み具合や、ガソリンスタンドのガソリン単価といった情報を提供することも可能になるでしょう」(丸氏)
34年の蓄積がある信頼のデータベース
タウンページデータベースは、NTT東日本、西日本が発行する電話帳がベースになっており、NTTタウンページが代理店として提供している。そのデータの蓄積は34年にも及び、時系列が求められる分野でも有効に活用できそうだ。実際、大学との共同研究で利用されたこともあるという。
「以前はダイレクトメールやテレアポなどに利用されることが多かったタウンページデータベースですが、昨今はビッグデータ化してお客さまの方でマージし、それを分析・可視化してアプローチをかけるという使い方がメインになっていると感じます。データ駆動社会を迎える中で、タウンページデータベースをぜひご活用いただきたいと思います」(丸氏)