デロイト トーマツ グループは8月23日、東京証券取引所プライム市場上場企業を対象にした「人的資本情報開示に関する実態調査」の結果を発表した。同調査結果によると、回答企業の86%が人的資本情報の測定・開示に向けて何らかの検討に着手している一方で、具体的な取り組みの決定・実行に至る企業は2割と少数だということが分かった。

  • 人的資本情報の測定・開示に向けた検討・取り組み状況 出典: デロイト トーマツ

同調査は同社が7月15日~8月10日の期間に東京証券取引所プライム市場の上場企業を対象に実施したもので、有効回答企業数は92社。

人的資本情報の測定・開示に向けた検討・取り組み状況を尋ねると、何らかの検討・取り組みを開始している企業は86%に上った。

人的資本情報の測定・開示に向けて具体的な検討・取り組みを開始している企業のうち、「外部情報調査や社内現状分析」や「自社に必要な人的資本情報を特定するための検討」といった検討フェーズの項目については、過半数が実施している。

しかし、自社に必要な人的資本情報を特定し情報を指標化して活用する、決定・実行フェーズ段階に至っている企業は各項目それぞれ1割前後、いずれか1つでも実施している企業を合計しても2割に過ぎない。

  • 人的資本情報の測定・開示に向けた具体的な検討・取り組みの進捗状況 出典: デロイト トーマツ

また、企業が検討・取り組みを進めるうえでの制約・課題と考えられている項目を見ると、調査対象企業全体では、1)開示方針・人材戦略の策定(開示方針の策定、指標を特定する上での人材戦略の策定)、2)実施体制の構築(実施する体制(実務者)、データ収集・分析ができる人材・組織)、3)データ収集・分析の仕組み(システムやツールの整備、データの収集しづらさ)の3つに分類される項目を挙げる企業が多い。

  • 検討・取り組み状況の段階別に見た制約・課題 出典: デロイト トーマツ

また、検討フェーズにとどまっている企業は、決定・実施フェーズに至っている企業と比べ、上記3項目のいずれも制約・課題と認識している割合が高い傾向にあるという。

  • 人的資本に関する各指標の測定・開示の実態 出典: デロイト トーマツ

ISO30414の枠組みに基づく人的資本に関する各指標項目について、測定・開示の状況を見ると、多様性、コンプライアンスと倫理、労働力の可用性は、既に開示していると回答した企業が多い。

一方、現在はしていないが今後測定したいとの回答が多かったのは、コスト、生産性、スキルと能力、採用・異動・離職、リーダーシップ、後継者計画の各項目だった。