東北大発の宇宙関連スタートアップとして2021年に設立されたElevationSpace(エレベーションスペース)と、DigitalBlastは8月17日、DigitalBlastが開発する重力発生装置「TAMAKI」を用いた植物栽培実験環境を提供するため、ElevationSpaceが開発・提供する小型宇宙利用・回収プラットフォームのサービス機「ELS-R1000」の利用に向けた検討に関する合意書(MOU)を締結したことを発表した。
アルテミス計画では、2020年代後半に月面に恒常的な有人活動拠点が建設される計画で、将来的にはそこから月面都市への発展も考えられている。また、2030年代から2040年代に実現するであろう火星有人探査も、まず地球~火星間の往復1年~1年半に及ぶ長期間の宇宙航行が必要となるほか、火星での滞在も帰還のタイミングの都合で長期間となることが予想されている。そのため、こうした低重力・微小重力環境での食の確保や植物栽培に対する課題意識が高まっている。
国際宇宙ステーション(ISS)の実験において、すでに微小重力環境が植物の育成に大きな影響を及ぼすことが明らかになっている。その一方で、月や火星といった低重力環境での植物育成への影響は、現時点ではまだ十分に把握できていない。
今回のMOUにより両者は、DigitalBlastが開発中の重力発生装置「TAMAKI」を用いた、月・火星を模した低重力環境での植物栽培実験環境を提供するため、ElevationSpaceが開発・提供する小型宇宙利用・回収プラットフォームのサービス機「ELS-R1000」への、同装置の搭載を実現することを目指していくことになる。
TAMAKIは、人類の月面進出を見据え、月面での生態循環維持システム構築に向けたプロジェクト「NOAH」の第2弾となる装置で、給水機能を備えた植物栽培装置の開発が予定されており、装置の一部を回転させることにより生じる遠心力を用いて、月面の重力である1/6Gなどを再現する(回転速度の調整で、火星の1/3Gなど、ほかの低重力環境も再現可能)。開発する装置は、民間企業や研究機関向けに、実験環境として提供する計画だという。
現在、プロジェクト「NOAH」の第一歩の位置づけとなる重力発生装置「AMAZ(アマツ)」は、2024年のISSへの設置・運用を目指し、地上実験を進めているところだという。