米国は中国とのハイテク覇権競争を国家安全保障上の脅威と位置付けているが、貿易データを分析したところ、中国向けハイテク輸出の審査を主導する米国商務省は、そのほぼすべての申請を承認しており、とりわけ重要な技術の輸出が増加していることが判明したと、米Wall Street Journalが8月16日(米国時間)付けで報じている

商務省のデータによると、2020年の対中輸出総額1250億ドルのうち、輸出許可が必要なのは0.5%未満で、同省はそのうち94%に当たる2652件のハイテク関連の輸出申請を承認していたという。その結果、米国は半導体、航空宇宙部品、人工知能(AI)など、中国政府の軍事的利益になるような品目の輸出を続けていると同紙は指摘している。

商務省は中国との長期的・戦略的な競争を重視しており、輸出規制を巡る判断は国防総省、国務省、エネルギー省と協議の上で下していると説明しているという。しかし、中国市場に依存している多くの米国企業やSIAやSEMIなどの業界団体が商務省の対中輸出規制に反対するロビー活動を積極的に行っており、米国の産業振興を担う商務省も米国の安全保障よりも商業上の利益を優先せざるを得ないようだが、中国の脅威を早急に見直す必要があるとの批判や不満が国防関係者から出ているという。

中国からのハイテク製品輸入関税は320億ドル

一方、全米民生技術協会が公表した報告書によると、米国企業が、2018年半ばから2021年末にかけて中国からのハイテク製品の輸入に際して、トランプ前大統領が課した関税を合計で320億ドル余りを支払ったという。このうち半分は中国製コンピュータ(ノートパソコンなど)や電子製品(スマートフォンなど)についての関税だという。

バイデン米大統領は、インフレに伴う消費者の負担を軽減するため、対中関税の一部を撤廃するかどうか検討しているという。また、米国のハイテク企業は、関税の大幅増税を契機に中国への依存度を弱めて、ベトナム、台湾、韓国、マレーシアなどからの輸入へ切り替えつつあるというが、実際の動きは限定的だという。

なお、多くの米国企業にとって売り上げに占める中国市場の割合が最大であり、かつ中国市場への依存度は高まるばかりであるという、また、たとえ米国メーカーブランドであっても中国で生産されたハイテク製品(例えば、PCやAppleのiPhone)への依存度が高い状態となっているという。