龍谷大学は8月10日、有機分子(芳香族化合物)「1ar」が容易に結晶化し、紫外光下で白色蛍光を発することを見出したことを発表した。
同成果は、龍谷大 先端理工学部 応用化学課程の中川優磨大学院生(研究当時)、同・内田欣吾教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する材料科学に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Materials Advances」に掲載された。
一般的に液晶テレビやLED照明の白色光は、赤、緑、青の3種、または青と黄の2種の光を発する有機材料同士もしくは無機材料同士の組み合わせで作られている。
そうした材料の1つに有機蛍光分子があり、発光ダイオード、化学センサ、蛍光プローブなどに広く応用されている。有機蛍光分子はパイ軌道が分子中に広く共役した構造を取っており、その構造の違いにより、赤、青、黄、緑など、多彩な発光色を示す。近年、1つの材料で白色の発光色を持つ蛍光材料の研究が注目されており、それを示す単一化合物がいくつか報告されている。
内田教授らは、フォトクロミック化合物「ジアリールエテン」の研究を長らく行ってきており、そうした中、その誘導体の酸化閉環して作成した多環芳香族化合物「1ar」の結晶が、分子内で青と黄の発光現象を同時に行い、白色の蛍光を発することを見出したという。
1ar結晶は、有機溶媒に溶かした1arをインクのように用いて文字を書き、溶媒が蒸発すると文字が白く発光することから、容易に結晶構造を取り易いことがわかるという。