量子科学技術研究開発機構(量研機構)は8月10日、同機構が運用する超高強度パルスレーザーシステム「J-KAREN(ジェイ-カレン)」が発生させる光ノイズ成分の低減に成功し、これまで困難だった高強度場科学の実験も可能としたことを発表した。
同成果は、量研機構 量子ビーム科学部門 関西光科学研究所の今亮主任技術員、同・桐山博光上席研究員を中心に、韓国・基礎科學研究院・超強力レーザー科學研究団、独・ドレスデン・ロッセンドルフ研究所の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、「High Power Laser Science and Engineering」に掲載された。
J-KARENは、30フェムト秒という極超短時間に、30ジュールというエネルギーの光をパルス状に照射可能な超高強度レーザーで、ピークパワーは、地球が太陽から受け取る光のパワーと同程度の1000兆ワットにも達するという。
このような超高強度レーザーでは、パルスの前後に発生する高強度の光ノイズが、レーザーパルスよりも先に照射標的に到達して、破壊してしまうため課題となってきた。
そうした光ノイズの除去手法の1つに、「プラズマミラー」技術がある。レーザーパルスをガラスなどの光を透過する物質に照射すると、光ノイズはガラスの表面をプラズマ化できないので、そのまま透過する。しかしレーザーパルス自体は、その高い強度によりパルスの立ち上がりでガラス表面を、フェムト秒スケールでプラズマ化。その後、レーザーパルスは自身が作ったそのプラズマによって反射され、その反射光は光ノイズを含まないパルスのみとなる仕組みだという。
プラズマミラーを効率よく動作させるためには、プラズマの反射率やレーザーパルスの時空間分布などを考慮した上で、レーザーパラメータを最適化する必要がある。その条件は、レーザー装置の性能が影響するため、装置ごとにそれぞれ異なる。そこで今回は、J-KARENにおいて、プラズマミラーシステムの性能を最大限に発揮するための性能評価実験が行われた。