自動車内装材などを取り扱う複合型専門商社の三洋貿易は7月15日、自動車内の子ども置き去り事故における潜在リスクの把握を目的とする実態調査の結果を公表。子どもの置き去り事故を防ぐための社会的セーフティネット構築が弱い実態などを明らかにした。
同調査結果は、子どもや孫を同乗させて運転したことがある20歳~69歳の計2652名を対象とした乗用車編と、幼稚園・保育園でのバス送迎を担当する運転手や教諭、送迎バス運営管理者など計267名を対象とした送迎バス編に分けて発表された。
約5人に1人が「車内に子どもを残した経験がある」と回答
乗用車編の調査では、回答したドライバーのうち約5人に1人が、直近1年間の間で、車内に子どもを残したまま車を離れた経験があるとのことだった。さらにその内、回答者全体の約0.5%となる14名は、車内に子どもがいることを認識せずに置き去りを経験したという。
この結果について、会見に登壇した三洋貿易の堀内登志徳氏は、直近1年間で無意識での子どもの車内置き去り事故が約3万2000件発生している可能性を示唆した。
置き去りの要因については世代によって考え方にギャップが見られる
また、子どもの車内置き去りが発生する理由について、「保護者の意識が低いから」との回答が全体の約73.3%を占め、次いで「用事を済ませる間に子どもを見てくれる人がいないから」との回答が約32%だった。
回答者の年代別で分類すると、「保護者の意識が低いから」と回答した人の割合は年代が上がるほど高くなり、60歳以上では80%を超える結果となった。対して、「用事を済ませる間に子どもを見てくれる人がいないから」と回答した割合は20代が最も高く、ほかの年代では大きな差が見られなかったとする。
このことから堀内氏は「日本では『保護者がしっかりしていれば置き去り事故は起こらない』という考えが根強い一方、共働き世帯が多い若い世代では、育児に関する負担が増大しており、世代によって考え方に差が出ていると考えられる」と考察した。
置き去り防止システムの普及には補助金などのサポートが必要
子どもの車内放置を検知し防止するシステムがあれば欲しいか、との質問では、「欲しい」「とても欲しい」との回答が、20代では半数以上に上ったのに対し、60歳以上では34.8%にとどまったという。
その一方で、「欲しい」「とても欲しい」と回答した人に対し、それらのシステムに対する支払許容額を尋ねたところ、無償~1万円程度までの低い金額との回答が約83%を占め、年代が下がるほど許容額が低い傾向が見られたとしている。
このことから堀内氏は、「現役の子育て世代は子ども置き去り検知システムを必要とする割合が高いものの、支払許容額は低く、普及のためには補助金などによるサポートが必要だと考えられる」と語った。
子どもの車内置き去りを見かけて行動する人はごく少数
過去に車内置き去りに関して経験したことについての質問では、「車に子どもを残したまま車を離れた」との回答が約29%だったほか、「車に子どもだけが残っているのを見た」という回答が414件あり、回答数全体の約15.6%を占めた。
また、車内に子どもだけが残されているのを見た414名に対し、その際に行った対応について尋ねたところ、約87%が「そのまま通り過ぎた」と回答したとのことだ。
これを受け堀内氏は、「無意識での車内子ども置き去りについて、発見した周囲の人が行動を起こす可能性は低く、社会的セーフティーネットはほとんどない状態だ。そのため、センサやアラートのような検知装置によって、子どもの置き去りを防ぐ必要がある」と結論付けた。