名古屋大学(名大)は8月12日、粒状物質による砂山地形の頂点を回転軸として回転させた上で観測可能な独自開発の装置を用いて、重力と遠心力の影響で砂山の斜面形状がどのような変化をするのか、さまざまな粒状物質を用いた計測を行える実験モデルを作ることに成功したことを発表した。
また斜面形状変化を、重力・遠心力・摩擦力のバランスによるモデル形状で説明することに成功し、実験結果のフィッティングから得られた摩擦係数の値が、回転荷重の操作履歴や遠心力と重力の比によって変化することが確認されたことも併せて発表された。
同成果は、名大大学院 環境学研究科の入江輝紀大学院生(研究当時)、名大理学部 第一装置開発室/全学技術センターの山口隆正技術職員、同・大学院 環境学研究科の渡邊誠一郎教授、大阪大学大学院 理学研究科の桂木洋光教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、粉末/粒子材料に関する全般を扱う学術誌「Advanced Powder Technology」に掲載された。
砂のような粒状物質で砂山形状を作成すると、その傾斜角は粒状物質の摩擦特性によって決まる「安息角」を持つ。この安息角(もしくは粒状摩擦特性)が、粒状物質のどのような特性により決定しているのかについて、実は詳しいことはまだよくわかっていないという。
一方でこの安息角特性は、小惑星探査機「はやぶさ2」が訪れたリュウグウなど、小惑星の表面地形がどう変化するのかを理解する上でも重要な基礎物性とされる。特に、安息角の重力依存性や自転による遠心力への依存性は、小惑星の地形や全体形状の変化に関する基本的特性として注目されている。
そこで研究チームは今回、粒状物質の斜面が重力と遠心力の影響を受けたときにどのような変形を示すのかについて、特に荷重の履歴依存性(現在の状態のみでなく、過去に受けた影響に依存すること)に注目して実験的に研究することにしたという。