東京医科大学は8月8日、「朝起きられない病」として知られる「睡眠覚醒相後退障害/睡眠相後退症候群」(DSWPD/DSPS)に対して、不眠症用医薬品「ラメルテオン」を夕刻(平均18:10)に超少量(中央値1/14錠)投与すると、患者の睡眠覚醒リズムを平均約3時間有意に前進させ、「夜眠れない/朝起きられない/起きても体調が悪い」という諸症状の改善に効果的であったという複数例の症例報告を発表した。
また、既存研究の薬理学的レビューを行うことにより、DSWPDの加療には通常用量(1錠=8mg)では多すぎると考えられること、「眠前」の投与だと服用時刻が遅すぎると考えられることを示したことも併せて発表された。
同成果は、東京医科大 精神医学分野の志村哲祥兼任講師らの研究チームによるもの。詳細は、米国睡眠医学会の機関学術誌「Journal of Clinical Sleep Medicine」に掲載された。
DSWPDは、体内時計の位相が社会通念上望ましい時刻と乖離することにより、「夜の早い時間に眠れず、朝の起床が困難で、起きても朝に強い心身の不良をきたす」ことを特徴とする。発症は思春期に多く、学校の退学や進学断念、職場での離職や解雇に追い込まれることがしばしばあり、社会的に大きなハンディキャップとなりうる、医学的にも重要性が高い睡眠障害とされている。治療の第一選択は睡眠衛生指導であり、特に光環境を中心に指導/調整が行われるが、効果が乏しいことも少なくないという。
また不眠症に対する医薬品としては、日本においてはメラトニン受容体(MT1/2)作動薬であるラメルテオン(ロゼレム錠)が承認されている。ただし臨床試験は存在せず、ごく少数例の症例報告が存在するのみだという。さらに、既存の研究や薬理学的プロファイルは「通常用量での投与はDSWPDを改善できない恐れがある」ことが示唆されているが、その理論的考察も充分ではなかったとする。
そこで研究チームは今回、DSWPDに対してごく少量のラメルテオンを夕刻に処方した例をまとめ、その効果の有無について検討すると共に、なぜ超少量のラメルテオン夕刻投与が効果的であると考えられるのかについての薬理学的レビューと検討を行うことにしたという。