大阪公立大学は8月5日、ヒザ前十字靭帯の再建術時に移植腱として大腿四頭筋腱を用いた方が、膝蓋腱(しつがいけん)を用いた場合よりも移植腱の折れ曲がり角度が小さく、大腿四頭筋腱の方が過剰な負荷が移植腱にかかるリスクが低い可能性があることを発見したと発表した。
同成果は、大阪公立大大学院 医学研究科 整形外科学の木下拓也大学院生、同・橋本祐介講師、同・中村博亮教授らの研究チームによるもの。詳細は、スポーツ医学に関する全般を扱う学術誌「The American Journal of Sports Medicine」に掲載された。
ヒザ関節の安定性に重要な役割を担うヒザ前十字靭帯は、スポーツなどで損傷を負ってしまうと、再建手術が必要となる。しかし、移植腱の損傷が大腿骨側で起きやすく、その部位での解剖学的特徴を明確にしておくことが重要だという。
ヒザ前十字靭帯大腿骨付着部の解剖学的特徴については、これまでにも多くの報告がなされてきたものの、各移植腱間の比較やそれら腱を移植したときの状態については、これまで研究があまり行われていなかったという。
特に、近年は移植腱として「大腿四頭筋腱」に注目が集まっており、大腿四頭筋腱の解剖学的特徴についての詳細な検討が求められていたという。
そこで研究チームは今回、ヒザ前十字靭帯の大腿骨付着部と、移植腱として大腿四頭筋腱、膝蓋腱の関係に着目することにしたとする。
具体的には、屍体ヒザを用いてヒザ十字靭帯、大腿四頭筋腱と膝蓋腱について組織学的にそれぞれの付着部幅・厚さと靭帯・腱の角度を計測。その結果、付着部幅・厚さについて、大腿四頭筋腱はヒザ前十字靭帯より有意に大きく、膝蓋腱はヒザ前十字靭帯よりも有意に短かいことが確認されたという。
また、ヒザ前十字靭帯再建後のCT画像で移植腱の折れ曲がりの角度(GBA)の計測を行ったところ、GBAと組織学的に計測した靭帯・腱の曲げ角度の関係から、大腿四頭筋腱の方が膝蓋腱よりも移植腱の折れ曲がり角度が小さいことを発見された。この結果は、ヒザ前十字靭帯再建後、膝蓋腱よりも大腿四頭筋腱の方が過剰な負荷が移植腱にかかるリスクが低い可能性を示唆していると研究チームでは説明する。
なお、今回の成果を踏まえると、研究チームでは、ヒザ前十字靭帯再建では、移植腱として大腿四頭筋腱の有用性に注目が集まっているが、今後、大腿四頭筋腱を使用したヒザ前十字靭帯再建の臨床成績の向上が期待できるとしている。