沖縄科学技術大学院大学(OIST)は8月4日、世界各地の研究機関と共同でアリに関する大規模な研究を実施し、これまでに得られた知見と機械学習を組み合わせることによって、各地でのアリの多様性を推定して可視化し、高解像度の世界地図の作製に成功したと発表した。
同成果は、OIST 生物多様性・複雑性研究ユニットのジェイミイ・キャス博士/日本学術振興会外国人特別研究員、同・ベノア・ゲナー博士(現・香港大学)、同・東史華技術員、同・エヴァン・P・エコノモ教授、OIST 環境インフォマティクスセクションのケネス・ダドリー氏らの研究チームによるもの。詳細は、米国科学振興協会が刊行する「Science」系のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載された。
アリは陸上生物の生物量の大部分を占め、その種数は1万4000種以上と見積もられている。生態系において重要な役割を担うが、アリの多様性を世界規模で評価する研究はあまり進んでいないという。
今回の研究プロジェクトは、研究チームが10年前に、博物館の標本コレクション、約1万件に及ぶ科学論文などをもとに、さまざまなアリ種の生息記録データベースを作成したことがきっかけとなってスタートした。そして、世界中の研究者からデータの提供や正確な情報の選別といった協力を受け、最終的に1万4000種を超えるアリを対象としたという。
入手記録の大半に標本の採取場所の記述があったものの、地図作製に必要な正確な座標に関する情報は含まれていなかったとする。そのため、入手したデータをもとに座標を推測し、同時にすべてのデータに誤りがないかを自動で確認する計算ワークフローが開発された。
その後、入手データ量に応じて、アリ種それぞれの分布について推測が行われた。データ量の少ない種については座標データを取り囲む形象が作成され、多い種については最適な統計モデルを用いて、それぞれの種の分布が予測された。