米国半導体工業会(SIA)によれば、2022年6月の半導体売上高は、前月比で1.9%減となったという。1976年までさかのぼって、 WEMA(米国西部電子機器製造業者協会)、SIAおよびWSTS(世界半導体市場統計)が集計したデータにおいて、半導体市場が6月に前月比マイナス成長となったのは史上初であり異常事態と言えると半導体市場動向調査会社である米IC Insightsが指摘している。IC Insightsによると、通常、6月は前月比で1桁ないし2桁のプラス成長を記録しており、これまででもっとも弱い成長率を記録した1985年でさえ、前月比1%増であったという。
米国の株式市場には「June Swoon(6月の失速)」という言葉がある。もともとは米メジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツの6月の勝率がどういうわけか悪いところから生まれた言葉らしいが、6月の米国株式市場も冴えない傾向があるようで、米国の株式市場関係者がこの時期になると使う相場用語になったという。2022年6月の半導体売上高の減少という歴史的な異常現象の発生により、半導体までがJune Swoonに陥ったとIC Insightsは指摘している。
また、このような異常な結果は、少なくとも2つの理由で驚くべきものであったともしている。1つ目は、2022年6月を含む期間は四半期末が多く、7月2日まで含む5週間で算出され、5月の実質4週間と比べて売り上げの増加が期待されていた点。2つ目は、最終商品メーカーが新学期や年末商戦に向けた新商品向け半導体を購入することから、6月のIC売り上げは通常、年間を通してもっとも好調な月の1つであるとされてきた点である。
今回のIC市場の落ち込みの最大要因についてIC Insightsでは、メモリICの販売が急激かつ劇的に落ち込んだことだと指摘している。メモリ大手3社の2022年第2四半期に該当する期間の売り上げは、4月と5月の伸びを6月の減少で相殺した形で表記されるため、売り上げの劇的な減少はそこからはすぐに読み解くことはできないが、Micron Technologyの2022年度第4四半期(6~8月)業績ガイダンスでは売上高が前四半期比17%減となっている。SamsungとSK Hynixは第3四半期の売上高見通しを発表していないが、同様の傾向と推測することはできる。
半導体業界は通常、暦年の第2四半期と第3四半期がIC売上高が好調な時期で、1984年以来、第2四半期の売上高実績は平均4.2%、第3四半期も平均6.1%で増加してきた。しかし、2022年第2四半期のIC市場の成長率はほぼ横ばいで、平均成長率を下回る結果となった。IC Insightsでは、2022年の第3四半期および第4四半期についてもIC売上高は、長期的な平均成長率を下回る可能性が高いとしている。
なお、現在の市場の弱さの要因としては、世界的なインフレ、サプライチェーンの混乱、ICの在庫削減に取り組むサプライヤと最終製品メーカーによる経済的懸念といったところが挙げられる。複数の半導体企業が2022年第2四半期の決算発表にて、インフレが消費者心理に悪影響を与えているとしており、特にコンシューマ向けPC、ローエンド/ミドルレンジスマホ、テレビ、ゲーム機などの出荷が低調であったとしている。