Samsungグループの電子部品・素材メーカーであるSamsung Electro-Mechanics(日本名:サムスン電機、以下Samsung EMと略記)が、事業主体を凋落気味のスマートフォン(スマホ)の部品から車載電装部品へと軸足を移す動きを見せているという。
同社のChang Duckhyun(チャン・ドクヒョン)CEO兼社長は、車載電装部品事業を成長動力と見込んで、電装用積層セラミックコンデンサ(MLCC)とカメラモジュール市場の攻略を進めることで、景気の浮き沈みが激しいモバイル関連部品の依存度を下げようとしている。
具体的には、カメラモジュール事業としては、供給単価が下落しているスマホ向けと比べて単価が5倍以上高い、車載向けADAS向けカメラモジュールに注力しようとしている。最近、同社はTeslaと車載カメラモジュールを納品する契約を結び、新たな足掛かりを作ることに成功した模様である。この契約規模は最低4兆ウォン(約4000億円)から最大5兆ウォン(約5000億円)に達するものと推測されており、同社が受注した単一契約の中でも最大級の規模となるという。
今回の契約によりSamsung EMがカメラモジュール市場トップのLG Innotek(シェア率は約26%)との差を縮めるものと韓国の半導体実装業界関係者は見ており、Samsung EM内部でも現状の約13%のシェア率から2~3年のうちには20%へと引き上げる目標を掲げているという。
車載MLCC事業や半導体パッケージ事業にも注力へ
一方の車載MLCC事業への取り組みとしては、電気自動車(EV)の本格普及期を迎え、スマホよりも電装部品市場の成長性が高いという判断から参入を決意。同社はこれまでスマホを中心としたモバイル製品分野で成長してきており、車載MLCC市場では存在感が希薄だった。調査会社によるとグローバルMLCC市場で同社のシェアは10%未満で、トップクラスの村田製作所(約25%)に比べてると大きな差がある。
しかしながら、同社は最近、技術難易度の高いとされるパワートレーン用MLCCの開発にも成功したとのことで、今後、自動車メーカーやTier 1への拡販に注力するとしているそうである。
また同社は半導体パッケージ基板事業も強化する方針を掲げており、すでにベトナム北部のタイグエン省イェンビン産業団地の生産工場にFC-BGA(Flip-Chip Pin Grid Array)製造ライン構築に向けた9億2000万ドル(約1233億円。1ドル134円換算)を投資することを決めた。投資は2023年までに段階的に執行する予定だという。加えて2022年2月には、追加で3200億ウォン(約320億円)を投資し、FC-BGAの生産を拡大させる計画であることも明らかにしており、FC-BGAの生産能力強化を図る動きを見せている。