東京理科大発ベンチャー企業のイノフィス(東京都新宿区)は2022年8月4日に、従来品より軽くて、作業時に動きやすい「マッスルスーツGS-BACK」の販売を開始すると発表した。

  • 作業モデルがマッスルスーツGS-BACKを装着し、作業動作を披露

    マッスルスーツGS-BACKを装着し、作業動作を披露している場面

メーカー希望小売価格は15万9500円。

イノフィスの折原大吾 代表取締役社長は、「マッスルスーツGS-BACKはカバー込みで質量3.3kgと軽く、操作性が高く、作業しやすいのが特徴になっている」と説明する。

  • 折原大吾代表取締役社長(左端)、小林宏ファインダー・取締役(右端)

    折原大吾代表取締役社長(左端)、小林宏ファウンダー・取締役(右端)

2013年12月に創業したイノフィスは、荷物などの積み込み・積み下ろし、人間の介護作業などの動作時に作業者の腰への負担を軽くし、荷物を軽く感じさせるアシスト装置の「マッスルスーツ」シリーズを開発し、販売してきた。

特に、2019年11月に発売した「マッスルスーツ Every」は、価格を従来品より約1/3まで大幅に引き下げて、国内・国外での事業の拡大に成功していた。

マッスルスーツ Everyなどでは、腰などの負荷低減に“McKibben型人工筋肉”と名付けられた圧縮空気を入れたゴムチューブの外側にポリアミド(通称ナイロン)線でできたメッシュを被せたものの変形による反発力を利用する仕組みを、負荷低減用に採用してきた経緯がある。

今回発表したマッスルスーツGS-BACKでは、従来のMcKibben型人工筋肉の代わりに、乗用車などのバックドアの開閉をサポートする機構に採用されているガススプリング改良品とコイルバネの組み合わせ品を採用している。

「McKibben型人工筋肉を採用したスーツでは、装着した人のふとももに強い押し付け力を働かせるために、装着しながら移動する際に歩きにくいと感じるという課題を大幅に軽減した」と、小林宏ファウンダー・取締役(東京理科大教授)は説明する。

ガススプリングとコイルバネの組み合わせは、全体に軽く、装着した人間にあまり反力を与えず、負荷が小さいため、装着した人間に違和感を与えないようだ。

今回の補助力の仕組みのガススプリングとコイルバネの組み合わせ部分の保証期間は 1年間。使用期間1年後には、ガススプリングとコイルバネの組み合わせ部分はカートリッジとして交換できる仕組みだ。

ガススプリング内に封入された窒素ガスが、抜けるため、ガススプリングの寿命(保障期間)を1年間としている。

イノフィスの有力な競合企業とみられてきた、パワーアシストスーツを手がけるパナソニック系企業のATOUN(アトウン、奈良県奈良市)は、2022年4月に清算を開始し、解散に至った。ここ数年間の新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、対面営業などが難しくなり、販売の伸びが悪化した結果とみられている。

その一方で、通称“パワーアシストスーツ”と呼ばれる人間の作業補助装置を事業化した企業は4、5社あり、国内市場での販売競争は激化しているとみられる。