ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)は8月8日、2023年3月期第1四半期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比6.3%増の1兆5720億円となった一方で、最終損益は3兆1627億円の赤字と、四半期の赤字額として過去最大を記録した。2022年3月期第4四半期に続き2四半期連続で最終赤字となった。2022年3月期第4四半期が2兆1006億円の赤字だったことを考慮すると、6カ月間で5兆2633億円の赤字を計上したことになる。

ソフトバンクG 代表取締役会長 兼 社長執行役員の孫正義氏は、「大きな利益を出していた当時、有頂天になっていた自分のことを恥ずかしく思う。深く反省している」と苦い顔を見せた。

  • ソフトバンクG 代表取締役会長 兼 社長執行役員の孫正義氏

    ソフトバンクG 代表取締役会長 兼 社長執行役員の孫正義氏

ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)事業からの投資損失が2兆9191億円となった。インフレ進行による景気後退懸念の高まりや金利上昇を受けた世界的な株価下落傾向などを背景に多くの公開投資先の株価が下落した。

また、急速な円安も業績に影響を与えている。3兆1627億円の赤字のうち8200億円が為替差損だ。国内会社の外貨建ての純負債が円ベースで増加したことが影響した。同社が最重要指標と位置付けている時価純資産(NAV)に関しては、3カ月で160億ドル(約2兆1613億円)下落した。

一方で、ソフトバンクGは「守り」を意識した経営方針を徹底している。継続的な資金化と投資の厳選の結果、保有資産に対する負債の割合を示すLTVを改善した。保有株式の減少に合わせて、純負債を減らした。2022年3月期第4四半期に4兆7000億円だった純負債を3カ月で3兆1000億円まで引き下げた結果、LTVは14.5%だった。

  • 保有株式、純負債、LTVの推移

    保有株式、純負債、LTVの推移

同社はアリババ株式を活用した先渡売買契約により104.9億米ドルを調達。さらに、Tモバイル株式21.2百万株を24.0億米ドルで売却したことにより継続的な資金化を実現している。SVF事業に関しては、大幅な運営コストの削減を行っている。新規投資の厳選を行い、既存投資先473社の価値を向上させていく方針に切り替えている。

孫氏は「ビジョンは高く持ち続けており、信じるものも変わっていない。しかし、一方的な投資を続けるといつか全滅してしまう。はやる気持ちを抑え、新規投資を厳選していく」と説明した。

また同社は、継続的な自社株買いも実施。2021年11月に発表した最大1兆円の自己株式取得枠のうち、同第1四半期に2935億円の自己株式を取得。2021年11月から2022年6月末までの累計取得額は6381億円、7月末までの累計取得額は7048億円に上る。

そして同社は新たな自己株式の取得枠の設定を発表した。2022年8月9日から2023年8月8日までの1年間で4000億円の自社株を取得するという。財務方針、投資機会、NAVディスカウントなどを考慮して実施していくとのことだ。