山梨県、山梨県富士山科学研究所、東京大学、NECネッツエスアイ、インターネットイニシアティブ、ヤマレコ、中央コリドー情報通信研究所は8月8日、富士山におけるローカル5Gの有効性を検証した「富士山地域DX『安全・安心観光情報システム』の実現」の実証事業の成果を公表した。
同事業は、令和3年度・総務省「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択されたもので、中央コリドー情報通信研究所を代表機関とするコンソーシアムを組成し、実証事業を推進。富士山にローカル5Gを整備することによって、脆弱な通信環境の改善や災害対応にも活用できるフェーズフリーな火山防災の実現を目指している。
令和3年度の実証事業では、富士山の5合目、6合目、7合目に基地局を設置し技術実証、課題実証を実施した。
技術実証においては、山の斜面の傾斜の角度や上り下りの方向が、今回の技術実証の距離範囲においては電波伝搬に影響を与えない可能性を確認した。また、同一周波数帯の同期局、準同期局の共用にあたっては、基地局正対の場合は数キロメートルの離隔距離が必要であるものの、基地局併設の場合は数10メートル程度で運用可能となることを確認した。
課題実証では、危険状況・災害予兆可視化のための遠隔監視システムを構築し、4Kカメラによる定点観測において天候や登山客の状況を把握できることを確認した。また、情報交換のためのローカルコミュニケーションシステムも構築し、必要な映像・音声のスループット・伝送品質・操作性を確認した。このほか、溶岩流ドリルマップなどサイエンスデータを表示可能なアプリを開発し、災害発生状況の可視化も実現した。
一方、冬場を含めて年中観測できるシステムの本格運用を実現するためには、光ケーブルと電源ケーブルの地下埋設工事による恒久設置が必須であることが課題として挙がった。また、凍結・積雪が早い富士山は工事できる期間が短いため、複数年度にわたる工事が必要となるが、工事のための許認可には多くの関係省庁が関わるため、調整には十分な交渉期間も設定する必要がある。
今後、コンソーシアムは電源確保、光/電源ケーブル埋設、基地局などの暴風対策・低温対策などに向けた設計・施工などについて検討を行い、関係省庁への許認可並びに財政支援申請に向けた具体的な5カ年フォローアップ計画を検討するという。