新技術・新商品の規格化などを通じた市場展開を目的に2018年に設立されたアルミ配管設備工業会(APEA)は、銅に代わる材料としてアルミを冷媒配管に使用するため、配管の規格化を実施。それを受け、パナソニックは、2022年9月受注分から、アルミ冷媒配管で施工した業務用電気空調機器についても、銅冷媒配管で施工した機器同様のメーカー機器保証を開始すると8月5日に発表した。

2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて電気自動車や洋上発電など、再生可能エネルギーの導入が加速する中、それを支えるモーターや発電機に使用される銅の需要が大幅に増加しているため、将来的には不足することが懸念されている。

APEAの代表理事、込山治良氏によれば、需要増加速度が加速しており、エネルギー・資源学会で可採年数が30年と計上されるとする研究もあるという。

  • APEAの代表理事、込山治良氏

    APEAの代表理事、込山治良氏(提供:パナソニック)

また、銅の価格の上昇も加速しており、電動に関係のない構造部材はアルミなど、他の素材に転換することが求められているという。現在、ほぼすべてが銅製である空調機器の冷媒配管においてもアルミへの置き換えが課題視されている。

  • 空調機器と冷媒配管の接続イメージ。現在はこの冷媒配管は銅素材がほとんどだという

    空調機器と冷媒配管の接続イメージ。現在はこの冷媒配管は銅素材がほとんどだという(提供:パナソニック)

アルミ冷媒配管は、リサイクルがしやすく、質量も銅の3分の1と軽量なため、作業員の負担軽減にもつながることが期待されている。また、銅と比較し、管接続工程で窒素置換が不要であるなど、施工時間も約20%短縮できるという。

  • アルミ冷媒配管 空調用被覆アルミニウム合金管 アルシード・チューブ

    アルミ冷媒配管 空調用被覆アルミニウム合金管 アルシード・チューブ(チヨダ製)(提供:パナソニック)

このようなメリットのあるアルミ冷媒配管だが、設計基準が未整備であることや、材料変更による空調機器の故障リスクの懸念から、普及が進んでいなかった。

そのため、APEAは配管の規格化を実施。それを受け、パナソニックでは、業務用電気空調機器を対象に、アルミ冷媒配管で施工した場合の性能および安全性に関する検証を行い、2022年9月受注分から、アルミ冷媒配管で施工した業務用電気空調機器をメーカー機器保証の対象とすることを決定したとしている。

決定の背景に関してパナソニック 空質空調社 空調冷熱ソリューションズ事業部 業務用空調ビジネスユニット ビジネスユニット長の小松原宏氏は「パナソニックもAPEAの会員であり、会合で普及に関して検討している中で、銅の可採年数の問題なども踏まえ、アルミ冷媒配管という新しい動きにも対応していかなくてはと考え、安全性に関する検証の結果が良かったことも踏まえて今回の決定に踏み切った」としている。

  • パナソニック 空質空調社 空調冷熱ソリューションズ事業部 業務用空調ビジネスユニット ビジネスユニット長の小松原宏氏

    パナソニック 空質空調社 空調冷熱ソリューションズ事業部 業務用空調ビジネスユニット ビジネスユニット長の小松原宏氏(提供:パナソニック)

安全性に関する検証としてパナソニックは、高温・高圧の圧力容器を用いて、銅冷媒配管、アルミ冷媒配管それぞれに冷媒や部材を投入し、配管部材の劣化速度を比較して銅冷媒配管とアルミ冷媒配管の結果に差がないことを確認。加えて、運転負荷の大きい暖房低温条件で実機の耐久試験を行い、各機能部品の劣化度合いを確認。試験後の部品に異常がないことを確認したという。

パナソニックでは、「APEA認定アルミ部材の使用」「パナソニック推奨メーカーアルミ分岐管の使用」「APEA会員企業により、APEA施工指針とパナソニック施工要領に則って施工を実施していること」「メーカー指定サービス実施会社による試運転を実施すること」「機器保証書に記載の条件を満たしていること」の条件を満たした機器を保証対象とするという。なお、現時点では、アルミ分岐管のメーカー推奨品は、高い信頼性を確認できたベンカン製のアルミ冷媒分岐管としている。

これらの条件を満たした機器を、銅冷媒配管で施工した機器同様、購入後1年間は、機器に起因する故障が発生した場合に無償で保証するとしている。