日立製作所は8月4日、AI映像解析技術で監視・警備業務を高度化する「Hitachi Multifeature Video Search」(MVS)において、2つの新機能を提供開始した。
MVSはこれまで、全身の特徴を使って検索対象人物を高速に発見・追跡できる「高速人物発見・追跡ソリューション」として提供してきた。発見・追跡の対象範囲を人物だけでなく車両や荷物などにも拡大していることから、今回、海外市場で用いてきたMVSと同一名称で国内市場においても提供開始する。
今回拡充した機能は、防犯カメラの映像から特定の行動パターンをとる人物をリアルタイムで検知する「行動検知機能」と、荷物と人物の所有関係を認識する「荷物置き去り/持ち去り検知機能」。これらにより、大規模な公共空間における喧嘩などのトラブル、置き引きや不審物などの早期発見が可能になるとしている。
「行動検知機能」では、MVSに取り込んだ映像から人物の骨格情報を読み取り、その骨格の動きをもとに人物がどのような行為をしているかを解析してアラートを発報する。9種類の特定行動(走る・しゃがむ・倒れる・蹴る・殴る・指をさす・見回す・立つ・歩く)の検知が可能で「殴る」「蹴る」といった暴力行為をしている人物や、周囲を「見回す」動作を続けている不審人物や迷子の子どもなどを早期に発見できるという。また、骨格の情報を事前にAIへ学習させることで、9種類以外の行動を検知することも可能。
「荷物置き去り/持ち去り検知機能」では、MVSに取り込んだ映像から荷物の置き去りや持ち去りを検知し、アラートを発報する。荷物と人物の所有関係を紐付けて認識することで、置き去り前後の移動経路や行動把握、荷物を持ち去った人物の追跡が可能。「キャリーケースを掴んでいる」「リュックを背負っている」など、荷物所有時の画像上の特徴をあわせて深層学習することにより高精度に判定できるという。
日立は阪神電鉄とともに、2021年10月から阪神甲子園球場での実証実験を複数回重ねてきた。実証実験では、日立社員を対象として、球場内のコンコースやスタンド席に設置されている防犯カメラとMVSを接続し、帽子や服装などの全身特徴からリアルタイムで人物検索を行った結果、約9割の精度で検索対象人物を発見したという。警備業務への本格導入の際は、検索対象人物の発見・追跡に要する時間を最大8割程度短縮できると見込んでいる。