JR東海は8月4日、東海道新幹線の夜間の保守作業において、保守用車同士の衝突を回避するために導入している「新幹線保守用車接近警報装置」を約1.9億円をかけて改良を行い、2022年4月から使用を開始したことを発表した。
また、これまでの装置では保守用車同士が150m未満で接近するには手動運転する必要があったが、今回の改良で10mまで自動で近づけるようになり、近接させた状況で運転する際の安全性が向上したことも併せて発表された。
保守用車は、作業内容に応じて、軌道モータカーなどの動力を持つ自走車両と、材料などを運ぶ鉄製トロなどの動力を持たない運搬用車両を連結して編成される。
接近警報装置は、GPS機能により衝突の危険を検知し、ブレーキと警報を自動的に作動させ、保守用車を停止させて事故を防止する機能を有する。ただし、これまでは自走車両の位置情報のみが把握されており、保守用車の編成長についての情報がなかった。そのため、後ろの保守用車の編成の先頭車両と、前の編成の最後尾との正確な距離がわからなかったという。
そのため、わかっていたのは自走車両同士の間隔であり、前後に運搬車両が連結されているという仮定の下、余裕を持って150mという安全距離が設定され、それを下回ることがないよう、自動でブレーキが作動して停止する仕組みを採用していたという。
結果として、作業の都合上、複数の自走車両を150m未満に近接させる必要がある場合には、運転者は装置の自動ブレーキ機能を解除した上で、目視などで前方車両との距離や速度に注意を払いながら、追突しないように保守用車を運転する必要があった。
それに対して今回の改良では、保守用車の実際の編成長を測定する機能が導入され、編成同士の間隔を正確に測ることが可能となったとする。編成長の測定は、保守基地からの出発時に本線手前に設置されたレーザースキャナを用いて正確に行われ、そのデータが自走車両の車上装置に送信される仕組みが採用されたという。
また今回は、保守用車のブレーキ制御システムの改良も行われた。前方の編成との間隔および相対速度に応じて、自動的かつ段階的にブレーキが作動し、速度を制御することで衝突を回避できるようにしたという。ブレーキ制御システムの改良の結果、編成同士の間隔を最小で10mまで近接させることが可能となった。
これらの改良により、複数の保守用車が150m未満の距離に近接して運転を行う場合も、運転者の注意力と自動ブレーキ制御システムの両方で事故が防止されるようになったことから、運転者は前方や周囲に対し、より多くの注意を向けられるようになり、保守作業における安全性が一段と向上したと同社では説明している。