畿央大学は8月4日、脳卒中患者は歩行中の自身について、「ロボットのようだ」や「人間らしくない」といった、悲観的な感情について頻繁に訴えることがあるが、その理由として歩行速度が主観的な人間らしさと関係していることを明らかにしたことを発表した。
同成果は、畿央大 ニューロリハビリテーション研究センターの林田一輝客員研究員、同・森岡周教授らの研究チームによるもの。詳細は、リハビリテーションプロセスに関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Rehabilitation Process and Outcome」に掲載された。
多くの脳卒中患者が、社会生活で自立した生活を取り戻すため、歩行能力の回復を優先してリハビリを行うことが多い。これまでの複数の先行研究から、中でも歩行速度が日常生活に重要な要因となることが明らかにされている。しかし、再び歩けるようになったとしても、運動麻痺などの影響で健常人と同等の速度での歩行は難しくなってしまうという。
その一方で、脳卒中患者は歩行中の自身について、悲観的な気持ちを頻繁に訴えることがあるという。このようなマイナスの感情は、身体に障害を患った自分自身と健康的な人たちとを比べることで湧き上がってしまうと考えられ、他者との交流が必須である社会参加を妨げてしまう可能性があると懸念されてきた。
しかし、どのような要因が脳卒中患者の歩行中の「人間らしさ」に関わっているのか、これまでの研究では検討されていなかったという。
そこで研究チームは今回、歩行中の主観的人間らしさには、歩行速度が関連するという仮説を立て、脳卒中患者を対象とした横断調査を行うことにしたという。