理化学研究所(理研)、千葉大学、理研ベンチャーのアール・ナノバイオの3者は8月2日、ヒトの指先から1滴の血液を採り、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の各種変異株に対する抗体量を8分で自動測定するシステムを開発したことを発表した。

同成果は、理研 創発物性科学研究センター 創発生体工学材料研究チームの秋元淳客員研究員(アール・ナノバイオ 上級研究員兼務)、同・柏木裕晴氏、同・小布施聖 研究パートタイマーI、同・伊藤嘉浩チームリーダー(理研 開拓研究本部(CPR)伊藤ナノ医工学研究室 主任研究員兼務)、CPR 伊藤ナノ医工学研究室の森島信裕客員研究員(アール・ナノバイオ 上級研究員兼務)、同・礒島隆史専任研究員、千葉大大学院 医学研究院 アレルギー・臨床免疫学の中島裕史教授、同・影山貴弘特任助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本分析化学会が刊行する機関欧文学術誌「Analytical Sciences」に掲載された。

理研の伊藤チームリーダーらは2003年、生体由来の物質など、有機化合物であれば何でも基板に固定化できる「何でも固定化法」を開発。免疫履歴を測定できるシステムへ応用し、2020年2月からは特異的IgE検査キットとして市販が始まった。

そして、2021年には同システムを発展させ、SARS-CoV-2を構成するいくつかのタンパク質をマイクロアレイの基板に固定し、それらに対するヒト血清内における抗体の有無を調べられることを報告した。今回は、変異株に対する抗体量をわずかな血液から測定できるよう、同システムをさらに改良することにしたという。

今回のシステムは、まず光反応性で非特異吸着を抑制する合成高分子をチップ(基板)上に被覆し、そこへウイルスのタンパク質をスポット状に配置。その後、紫外線照射による光架橋で、タンパク質がチップに固定化されたマイクロアレイチップを作製する。タンパク質には、SARS-CoV-2の内部にあるヌクレオカプシド(N)タンパク質と、変異株ごとに異なるウイルス表面のスパイク(S)タンパク質の一部(感染する細胞に接着する部位)が選ばれた。

このマイクロアレイチップを利用したウイルス・マイクロアレイシステムでは、検体血清中に各ウイルス・タンパク質に結合する抗体があると発光し、その発光像をCCDカメラで撮影することで、抗体の多寡が判定される仕組みだという。