自動運転レベルについて、SAE(米自動車技術会)が分類するレベル3「条件付き自動運転システム」が登場しました。これはドライバーが必要な場合にのみ運転に介入するシステムですが、ドライバーが運転にほとんど介入しないレベル4(高度運転自動化)およびレベル5(完全運転自動化)のシステム開発も進行しています。

ドライバーが運転に介入する段階から、自律走行が可能なエコシステムに至るまで、自動運転の進歩に合わせてギャップを埋めるためには、車内および運転中に直面する様々な状況を迅速かつ確実に情報収集し、ドライバーや車内システムにシームレスに伝達する、AIベースの車内アシスタントが求められます。Cerenceが提供する「Cerence Co-Pilot(セレンス・コパイロット)」は、まさしくAIを利用した直感的なコンパニオン型音声アシスタントと言えます。

現在、緊急車両の接近をドライバーに早期に通知喚起するソリューションが重要視されています。特に自動運転時に周囲の状況を把握し、ドライバーに外部の注意を促して乗客の安全を確保するためにも不可欠です。Cerence Co-Pilotの機能の1つである「Cerence EVD (Emergency Vehicle Detection」は、世界各国の1,500以上ものサイレンを認識し、最大600m離れた場所にあるパトカー、消防車、救急車のサイレンを識別して、緊急車両の進行方向を特定します。それによって、レベル3、レベル4および5にかかわらず、自動運転車が道を譲る必要がある緊急車両情報をドライバーに提供します。

「マイク」のパワー

Cerence EVDの利点の1つは、すでに車に装備されている室内マイクを使用することです。車内の音声アシスタントに使用されているマイクの高度な音響エコーキャンセレーション機能により、たとえば車内で音楽を聞いている最中に車外でサイレンが鳴った場合でも、そのサイレン音を検出します。実際にサイレンが検出されると、システムは再生中の曲や電話の音声を無効にし、ドライバーに警告します。また、今後、車種に標準装備される外部マイクと連携することで、緊急車両が接近している方向情報も検出できます。将来的にドライバーが不要となる自動運転システムでも、同じ技術で自動運転車にサイレンが検出されたことを警告し、自動車に適切な対応を要求します。

道路に“目”と“耳”を配る

ほとんどの地域において、緊急車両はライトとサイレンの両方を搭載することが法律で義務付けられています。ドライバーは運転中にそれらを目で見て、耳で聞く必要があります。なぜなら多くの場合、ドライバーは前方を注視しているので視界が遮られて、緊急車両が見えない可能性があるからです。同じことは自動運転車にも当てはまります。画像やライトから緊急車両を検出する自動運転車のセンサーは、他の車によるブロックや妨害、また悪天候などに影響されます。Cerence EVDは、複数のセンサーにより緊急情報を確実に早期検出し、緊急時における迅速な対応を可能にします。

Cerenceの音声AIスイートの1つであるCerence EVDは、既存のAIアシスタントと容易に統合でき、車内外のマイクを有効活用できます。セレンスは、自動運転車が周囲の状況をよりよく理解し、ドライバーや乗客に必要な行動を伝えられるような技術革新に従事し、運転がより安全に、より楽しいものとなる未来の実現を目指します。

Cerence Emergency Vehicle Detection from Cerence Inc. on Vimeo.

著者プロフィール

ステファン・ハメリッヒ(Stefan Hamerich)
Cerence
製品管理ディレクター
ドイツ・ウルムを拠点に製品管理部門を統括