経済メディアである米Bloombergが、米国半導体製造装置業界に詳しい関係者の話として、過去2週間ほどの間に、米国のすべての半導体製造装置メーカーは、中国に14nmプロセス以下の半導体製造に対応する装置を供給しないようにとの通知を米国商務省から受け取ったと7月30日付けで伝えている

これまではSMICに対して、10nm以下プロセス向け製造装置の輸出を事実上禁止していた。正確には、輸出に際して商務省からのライセンスを必要するとしていたが、ライセンスが発行されていない。その規制内容を具体的に示すと、「Department of Commerce Adds China's SMIC to the Entity List, Restricting Access to Key Enabling U.S. Technology」という米国商務省声明(2020年12月18日)で、「Items uniquely required to produce semiconductors at advanced technology nodes—10 nanometers or below—will be subject to a presumption of denial to prevent such key enabling technology from supporting China's military-civil fusion efforts.」と明記されており、10nm以下のプロセスで半導体を製造するために必要な品目について、輸出許可申請を出しても拒否する見込みであるとしていた。

今回の報道では、10nmプロセス以下の製造を可能(can)とする製造装置と説明しているがこれは正しくない。これでは、28nmや40nm向けであっても10nm以下のプロセスを実行できる性能を備えていれば対象となってしまい、中国を最大市場とする米国半導体製造装置メーカーにとってはとても容認できる規制ではなくなってしまうからだ。

KLAのCEOであるRick Wallace氏は、Bloombergからの問い合わせに対して「14nmよりも微細なチップを製造する装置の中国への輸出ライセンス要件の変更について米国政府から通知を受けた」と述べたが、KLAの事業に重大な影響はないとも述べたという。

米国政府による規制が10nm向けが14nm向けになったところで、せいぜいSMICの現行ビジネスにおいては非主流の14nmプロセス向け製造装置が規制対象に追加されただけで、多少の影響はあったとしても、KLAのCEOが言うように重大な影響はないが、輸出規制の対象が14nmプロセス以上のレガシープロセス向けであっても、14nmで処理を行える能力を有するすべての装置だとしたら、KLAのみならず多くの米国半導体製造装置メーカーに影響を与えることになってくる。

米商務省が日本を含む海外企業にも対中規制を域外適用する可能性をBloombergの記事では示唆しているが、現在のところ、米国外メーカーは商務省から具体的な要請を受けてはいないようである。米国政府は、オランダ政府に対しASMLがDUV露光装置を中国に販売することを禁止するよう要請しているとも伝えられてはいるが、ASMLからは明確なコメントは出されていない。今後、さまざまな形で、米国の対中規制の強化が予想されるが、多くの米国企業にとって中国は最大市場であり、いかなる輸出規制も業績を悪化させる可能性が高く、米国のSIAやSEMIなどの業界団体は、以前から自由貿易を阻害するすべての規制に反対を表明している。