島根大学は7月29日、島根県邑南町役場との共同研究として、集団健康診査のデータを分析したところ、高齢者の咀嚼機能の低さや義歯の不使用が、高血圧の危険性を高めることを明らかにしたと発表した。
同成果は、島根大 地域包括ケア教育研究センターの安部孝文助教、同・磯村実センター長、同・矢野彰三 副センター長、島根県邑南町役場保健課の共同研究チームによるもの。なお、邑南町役場保健課は、全国に先駆けて集団健康調査において歯科相談の中で歯の健康チェックを行っており、今回はその共同研究の一部として実施された。詳細は、日本高血圧学会の欧文公式学術誌「Hypertension Research」に掲載された。
高齢者の歯の喪失は、日常的な食品の選択に影響し、野菜不足といった栄養バランスの悪化を招く可能性があると考えられている。そこで研究チームは今回、2016年6~7月に邑南町で実施された集団健康調査に参加した、65歳以上の高齢者551人のデータを用いて分析を行うことにしたという。
具体的には、15秒間グミを咀嚼した後、その分割数によって咀嚼機能を調査。その結果、分割数の少ない高齢者(分割数19個以下を咀嚼機能の低下と区分)は、高血圧を有する危険性が高いことが判明したとする。
また歯の本数では、28歯ある高齢者に比べて、歯を喪失している高齢者(0~19歯または20~27歯)は、義歯を使用していない場合、高血圧を有する危険性が高いことも確認されたという。
これらの結果は、高齢者の歯の喪失に対して、義歯による適切な治療が行われること、また口腔ケアによって咀嚼機能が良好に保たれるようにする必要性が示されていると研究チームでは説明している。
なお研究チームでは、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、歯科医院への受診を控えている方もいると考えられるが、自宅での口腔ケアと合わせて定期的な受診を行うなど、口腔機能の維持・改善を行うことが大切だとしている。