東芝は8月1日、生産ラインで搬送中の製品表面の微小な欠陥を、広い撮像視野でリアルタイムに可視化・判別する工学検査技術を開発したと発表。7月25日には、オンラインで事前発表説明会が開催された。
微小な欠陥を可視化する東芝の光学検査技術とその課題
慢性的な人手不足が課題となっている製造現場では、その解決に向け自動化が進められており、品質担保に不可欠な外観検査においては、カメラや顕微鏡などのイメージングシステムの活用による検査の自動化が主流となっている。
しかし、微小な欠陥はカメラで検出できない場合があるため、未だに熟練技術者による目視での検査が多く行われ、完全な自動化には至っていないという。
また、目視による検査は、作業者の主観が介入するため定量的評価ができない点や、熟練者による技術伝承の必要性などさまざまな課題があり、人手に頼らない検査方法の開発が求められているとのことだ。
これらの課題に対し、東芝は、通常のカメラ撮影では検出が難しい微小な欠陥を色分離して撮像する光学検査技術「OneShotBRDF」を2019年に発表している。
同技術では、欠陥部分に照射された光が正常部分とは異なる角度で光を反射する性質を活用。撮影対象に対して平行な光とビームスプリッタを利用し、撮影対象が反射した散乱光の角度の違いをカラーフィルタによって色分離して撮影する。
同技術は、目視での検出が難しい欠陥を鮮明に判別するため、自動化への活用が容易な点や、既存設備の大幅な改造を必要としない点で優位性を持つ一方、撮影可能範囲が平行光を検出する撮像レンズの大きさに依存するという課題があった。
多くの製造現場では、ライン上を移動する製品に対する外観検査が行われている現状を受け、東芝は、より広範な外観検査の自動化に向け、同技術のラインカメラへの適用を目指し、新技術の開発を行ったとのことだ。
拡散方向を限定した独自の光源を適用
今回発表された新技術では、製造ラインの搬送方向では平行光で、幅方向では拡散光となる独自の照明と、ラインカメラのレンズの前に設置されたストライプ状の多波長開口によって、光学系を構成した。
搬送方向に対して平行な光を検査対象に照射することで、正常部分と欠陥部分では、搬送方向に対し垂直に異なる光を反射する。この反射光のずれを、ストライプ上の多波長開口により識別することで、色分離して撮像することが可能だという。
一方、同技術のライトから照射される光は、幅方向には拡散するため、より広い視野幅で撮像できるといい、撮像範囲は反射光を検出するラインセンサの長さに依存するとのことだ。
東芝は、すでに180mm幅での撮像を行い微小欠陥の検出に成功しており、これ以上の幅でも技術の適用は可能だとしている。
欠陥の検出精度向上にさらに注力へ
東芝は今後の展望として、新技術を組み込んだ画像検査ソリューションを、同社の事業会社である東芝デジタルソリューションズから上市予定だとするほか、AI技術による画像処理と組み合わせ適用範囲を拡大するとしている。また併せて、今後もさらなる検出精度の向上へ研究に注力していくとのことだ。