あらゆる業界にデジタル化の波が押し寄せる今、多くの企業がこれを変革の好機と捉え、積極的な動きを見せている。保険業界大手の第一生命保険(以下、第一生命)もその1社だ。同社は、顧客体験の向上や顧客理解の深化のため、戦略的なデータ活用に取り組み始めているという。
6月23日、24日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Summer forデータ活用 データから導く次の一手」では、第一生命保険 イノベーション推進部 フェローの板谷健司氏が「第一生命における戦略的データ活用の推進」と題して講演を行った。
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顧客体験向上に向けてデータ活用を本格化
第一生命保険がデータ活用を本格化したのは2019年度のこと。同年度にデータマネジメント室を立ち上げ、2021年度にはデータアナリティクス室を分割、2020年度にはデータ戦略室を分割し、現在は3室体制によるデータ活用推進を行っている。
データ活用に着手した背景には、顧客のライフスタイルや価値観の変化、消費動向の多様化などがあったという。全国規模で多くの顧客との接点を持つ同社にとって、現在のデジタル化伸展の波は変革の大きな機会となった。第一生命では、デジタルの中での顧客体験をいかに充実させるか、またそのために顧客との接点で得られる情報をどのように活用できるかが重要だと考え、「業務効率化ではなく、あくまでも体験価値の向上、顧客満足度向上のためのデータ活用である」という方針が掲げられた。
また、顧客との接点もこれまでの点から面へ、対面からデジタルやハイブリッドへと変わっていくことから、OMO(Online Merges with Offline)を実現することも重視。「あらゆる接点でデジタルとオフラインが融合しながら、顧客をしっかり理解し、顧客の望むチャネル・場面、望むことをしっかりと提供していくことが最大のCX向上につながっていく」(板谷氏)と考え、CXデザイン戦略を推進することも決定した。
CX向上のためには、データ解析技術を使った顧客理解の深化が欠かせない。これを実現するには、ビジネスにおいてAIやBIを使いこなすことが求められる。板谷氏は、「AIとは見える化、分析、制御・誘導という人間の知的活動の一部を代替するもの」だと見解を示す。その上で、分析の目的に対し、一流の分析担当者、一流の分析技術があったとしても、分析データが不適切であれば、目的を達成することはできないと指摘する。