麻布大学は7月28日、ネコの社会行動とホルモン、腸内細菌叢の関連性を解析した結果、攻撃性などに関連するテストステロンやコルチゾールの値が低くなることにより、ネコはほかの個体と同じ空間を共有して集団生活が可能となるものの、“愛情ホルモン”として知られるオキシトシンの機能は仲間に対する親和的なものとは異なっており、同じ空間で生活しているほかの個体を仲間と見なしていない可能性を明らかにしたことを発表した。
同成果は、麻布大 獣医学部 介在動物学研究室の子安ひかり研究員、同・永澤美保准教授、同・菊水健史教授らの研究チームによるもの。詳細は、米オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
ネコは単独での生活を好むイメージがあるが、家の中で複数匹で飼われ、仲良く暮らしている様子もよく見ることができる。そうしたネコが集団で生活するか、または単独で生活するかは、エサの分布など、その種を取り巻く生態学的要因によっても変わってくるという。野生のネコ科動物の多くは排他的な縄張りを持ち、ライオンなどの一部を除けば単独で生活している種が多いが、イエネコ(以下、ネコ)はエサが豊富なところでは高密度で、互いに交流しながら生活している。
ネコが集団生活を可能にするためには、ほかの個体が身近で生活しても気にしない寛容性や、衝突を避けるための行動戦略を持ち合わせていることが予想されるという。このような寛容性といった気質や行動はテストステロン(攻撃行動や競争などに関与)、コルチゾール(脅威に直面した際の攻撃性や恐怖反応に関与)、オキシトシン(集団内に対しては親和的に、集団外に対しては敵対的に機能)などのホルモンや、腸内細菌叢によって調節されていると考えられている。
そこで研究チームは今回、ネコが集団生活を可能にしたメカニズムと、また現在どのような集団を形成しているのかを明らかにする調査を行ったという。