PwCコンサルティングと東京ヴェルディクラブは、7月28日、eスポーツプロ選手の熟練した技能について、複数の情報を組み合わせた「マルチモーダルAI」を活用し分析したプロジェクトを実施したことを発表した。
PwCコンサルティングは、2016年に東京ヴェルティがeスポーツ部門を設立後、データ&アナリティクスチームが持つ独自の分析技術を活用し、高次な瞬発力や判断力が必要とされるeスポーツにおけるバイタルデータや試合結果などの分析・検証を行い、データに基づいたプレー改善やコンディション向上を支援してきたという。
今回のプロジェクトでは、東京ヴェルディeスポーツに所属する選手の熟練技能の継承支援を目的に、格闘ゲーム時における「視覚」「表情」「キー操作」「感情」「試合結果」「選手へのヒアリング内容」という複数の情報を組み合わせた「マルチモーダルAI」を用いた技術検証を実施。
これまでプロ選手の暗黙知だったハイパフォーマンス時の状態を見える化し、選手育成や勝率向上やeスポーツ以外の領域での展開可能性を探ったという。分析結果としては、プレー中は真顔の状態が多いため、neutralやsad(真顔がsadに近い傾向)が多く検出されたという。
AI化に関しては、評価の観点から1試合の合計時間が短く、展開の早いゲームが適していたため、東京ヴェルディeスポーツとともに共同で「世界一のプロeスポーツチームを作ろう!」というプロジェクトの運営を行っている名古屋OJAの鬼木渉選手にデータの収集に協力を仰いだという。
PwCコンサルティングと東京ヴェルディクラブは、同プロジェクトを通して得られた結果や知見を、eスポーツだけではなく、さまざまな領域の社会的課題解決に活用していきたい考え。
例えば、オフィスワーカーの感情、環境音が業務に与える影響を整理し、従業員のメンタルケアや集中力向上に、またセールス活動においては成約時のカウンターパートの表情や視線と成約率の因果関係分析による成約率向上などへの応用も期待されるという。また、リモートワークにおけるコミュニケーションの取りづらさといった課題に対しても、オンラインやデジタル上で日常的にコミュニケーションを取り、チーム間の信頼関係を醸成していたeスポーツ選手のコミュニケーション術は、新たな示唆を提示できる可能性があると考えているという。
今後両社は、同プロジェクトを通じて得られた知見を活用し、企業やオフィスワーカーが直面する課題解決を目指しリモート環境におけるチームワーク形成のノウハウ構築や、メンタルヘルスケアやヘルステックサービスの領域での活用に共同で取り組む予定だという。