東京都立大学(都立大)、名古屋大学(名大)、京都大学(京大)の3者は7月22日、次世代半導体材料として注目されている遷移金属「ダイカルコゲナイド」(TMDC)において、異なる2種類の半導体TMDCが接合した半導体ヘテロ構造を利用した発光デバイスの作製に成功したことを発表した。
同成果は、都立大 理学研究科 物理学専攻の和田尚樹大学院生(研究当時)、同・高口裕平大学院生(研究当時)、同・遠藤尚彦研究員、同・宮田耕充准教授、名大工学研究科 応用物理学専攻の蒲江助教、同・竹延大志教授、京大 エネルギー理工学研究所のWenjin Zhang博士、同・松田一成教授、同・宮内雄平教授、産業技術総合研究所(産総研) 極限機能材料研究部門の劉崢上級主任研究員、産総研 デバイス技術研究部門の入沢寿史研究グループ付らの共同研究チームによるもの。詳細は、ナノテクノロジーを含む材料科学に関する学際的な分野を扱う学術誌「Advanced Functional Materials」に掲載された。
TMDCは、高い安定性を持つ、層の厚さや含まれる原子の種類に応じて電気的な性質が変化する、電流の担い手である電子やホールの両方を流せる、強い発光を示す、さまざまな基板上に成膜転写できる、などといった特徴があり、そうした半導体材料としての利点から、電子デバイス、センサ、そして発光デバイスなどへの応用を目指すさまざまな研究が続けられている。
発光デバイスへの応用に関しては、TMDCの電気伝導や発光特性の理解と制御が重要な課題となっている。特に、電子もしくはホールを流しやすい2種類の単層TMDCを利用し、高品質な接合構造を作ることが1つの主要な研究課題となっていた。しかしこれまでの先行研究では、作製した接合構造の結晶性などに課題があったという。
そこで研究チームは今回、TMDCの合成法である化学気相成長を利用し、その原料の供給方法や成長温度を改善することで、高品質、かつ大面積な接合構造を作製することにしたとする。