気象庁によると、24日午後8時5分ごろ、鹿児島県の桜島で爆発的噴火が発生し、大きな噴石が火口から約2.5キロ先まで飛散した。同庁は噴火45分後に噴火警戒レベルを噴火前の3「入山規制」から、最高レベルである5「避難」に引き上げた。

  • alt

    気象庁の監視カメラが捉えた24日午後8時5分の桜島南岳山頂火口の爆発の状況(気象庁提供)

気象庁は24日午後11時前から中辻剛・火山監視課長が緊急に記者会見し、噴火前後の状況を説明した。中辻課長によると、桜島周辺の監視データから18日から22日ごろにかけて山体が少しずつ膨張していることを確認したため注視してきた。その後膨張傾向は緩和したものの一定の噴火はあり得るとして注意を呼びかけていた、という。

今後の見通しについて中辻課長は「山体膨張の規模は小さい」として、1914年に発生し、多くの死傷者を出した「大正噴火」のような大噴火が起きる可能性は低いとした。その一方で、土石流や火砕流が発生する恐れがあるとの見方を示した。特に南岳山頂火口や昭和火口から約3キロ以内の居住地域では、大きな噴石が飛散する可能性があるとしている。

  • alt

    気象庁が定めた警戒範囲。太い紫の線は同庁が噴石の可能性があるとした火口から3キロの警戒範囲(気象庁提供)

気象庁によると、23~24日にかけて南岳山頂火口で4回噴火し、最高1200メートルまで噴煙が上がった。24日午後8時5分の爆発的噴火により、噴石は南岳山頂火口の東―南東方向を中心に火口から2.5キロ付近まで飛んだとみられる。桜島で大きな噴石が2キロを超えて飛散したのは2020年6月4日以来という。

鹿児島市などによると、気象庁の判断を警戒レベル5「避難」の判断を受け、同市有村町や古里町の一部住民に避難指示を出した。現地からの報道によると、住民らはフェリーで鹿児島市街地側に向かった。

  • alt

    桜島の噴火警戒レベルを説明する気象庁のリーフレット(気象庁提供)

首相官邸は24日夜、危機管理センターに官邸対策室を設置。岸田文雄首相は、早急に被害状況を把握するほか、住民の避難など被害防止措置を徹底し、今後の火山活動観測を強化することなどを指示した。

桜島は、鹿児島湾に面した東西約12キロ、南北約10キロの火山で、最高峰は北岳(標高1117メートル)。蛤良カルデラの南縁付近に位置し、複数の火口がある。気象庁データでは2020年は432回、21年は145回の噴火が観測されるなど火山活動が活発だった。

1914年1月に発生し、15年9月ごろまで続いたという記録がある大正噴火では、溶岩流が海を埋め、大隅半島と陸続きになった。当時の記録ではこの噴火で約60人の死者、行方不明者が出た。蛤良カルデラは約3万年前ごろに大噴火を繰り返し、最後の巨大噴火で大規模火砕流が発生し、現在のカルデラが形成。桜島はこの巨大噴火でできたとされている。

関連記事

地球史上2回目の大量絶滅、大噴火が原因と結論 東北大

桜島のマグマは、大噴火の前に火口直下でその動きを止める