ネットアップは7月21日、オンラインとオフラインのハイブリッドによる事業戦略説明会を開催した。説明会では、同社におけるクラウド製品・サービスの最新情報が発表された。

クラウドの最適化とセキュリティ強化を図るために

冒頭、ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏は「当社が行ったユーザー調査の結果、IT投資はクラウドの最適化とセキュリティ強化に重点が置かれているほか、将来的にストレージサービスはオンプレミスが20%、クラウドは80%の比率にするという回答が最多だった。ハイブリッドクラウドに移行する傾向は、時間とともに広まっており、クラウドは導入段階でなく、ビジネスで活用する前提になっている」と述べた。

  • ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏

    ネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏

一方で、データ活用の新しい課題が発生し、ハイブリッドマルチクラウドの管理が複雑になっており、クラウドのプラットフォームは業務ごとに違い、さまざまなデータが生成されるが、データは統合されずにセキュリティ状態も把握できていないという。

そこで、同社はユーザーが抱えるクラウドの新たな課題に向けて「シンプル」「セキュア」「フレキシブル」の3つのキーワードをもとに解決するとしている。

「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」など新製品・機能を発表

ネットアップ チーフテクノロジーエバンジェリストの神原豊彦氏は「お客さまのハイブリッドクラウド環境を、よりシンプルに、よりセキュアに、よりフレキシブルしていくことで、デジタルビジネスへの支援を確実なものにする」と力を込める。

  • ネットアップ チーフテクノロジーエバンジェリストの神原豊彦氏

    ネットアップ チーフテクノロジーエバンジェリストの神原豊彦氏

  • 新製品・機能の概要

    新製品・機能の概要

シンプルではハイブリッドクラウド環境の体験をよりシンプルにし、セキュアについてはランサムウェアとサイバー攻撃からの回復力の強化、フレキシブルでは「Any Cloud, Any Workload, One Approach(どのようなクラウドやワークロードでも1つのアプローチで)」を掲げている。

まずは、シンプルに関しては単一のコンソールでハイブリッドマルチクラウド環境の統合管理を行う「Cloud Manager」に、データ保護、可視化、ガバナンス、階層化と、さまざまなデータ管理サービスのUI統合と相互連携ができるようになった。

また、「Hybrid cloud Storage-as-a-Service (STaaS)」としてサブスクリプションサービス「NetApp Keystone」を拡張し、オンプレミスとパブリッククラウドの間で統合されたサブスクリプションライセンスの提供を開始。

これにより、単一の契約下でデータとワークロードを自由に移動させることができる、四半期ごとに利用状況に応じたライセンスの移動を可能としている。

  • 「Hybrid cloud Storage-as-a-Service (STaaS)」の概要

    「Hybrid cloud Storage-as-a-Service (STaaS)」の概要

セキュアについては、ストレージOS「ONTAP 9.11.1」で重要な管理作業で複数の管理者権限による承認機能の追加と自律的ランサムウェア保護機能の拡張、「Cloud Backup」はSnapLockバックアップ機能、S3オブジェクトロック機能、アプリケーションと仮想マシンのバックアップ機能を追加。

さらに「Cloud Data Sense」ではファイルパーミッション管理の拡張、Cloud Managerは「Ransomware Protection Dashboard」機能の搭載、「Cloud Insights」でONTAP自律的ランサムウェア保護機能との連携、Professional Servicesではランサムウェアプロテクション&リカバリサービスの提供を開始する。

  • 「Ransomware Protection Dashboard」の概要

    「Ransomware Protection Dashboard」の概要

神原氏は「ランサムウェアなどのサイバー攻撃に対処するためには従来のような脅威の検知・修復だけではなく、データ保護も融合した新しいアプローチが重要だ。このアプローチを当社はサイバーレジリエンスと呼び、サイバー攻撃に遭った際に即座に復旧できるように機能を拡張した」と説明する。

  • ネットアップが考えるサイバーレジリエンスの概要

    ネットアップが考えるサイバーレジリエンスの概要

フレキシブルでは「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」として、VMware Cloud Serviceにおける外部データストアの提供し、Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google CloudのVMware Cloud Serviceにおいて外部データストアに認定されている。

データ容量が大きくIO負荷が高いワークロードにおいて、VMware on Cloudのコストを35~45%削減することを可能とし、VMwareのクラウド運用(移行、プロビジョニング、スケール、リサイズ、リフレッシュ、クローン)を高速でき、仮想マシンのバックアップオフロードとデータ保護を強化。オンプレミスのVMware環境でネットアップ製品の利用有無にかかわらず、利用を可能としている。

VMware Cloudにおける「VMware Cloud on AWS」と「Amazon FSx for NetApp ONTAP」、「Azure VMware Solution」と「Azure NetApp Files」、「Google Cloud VMware Engine」と「Cloud Volume Services for Google Cloud」との組み合わせによる外部データストアの提供を開始する。

  • 「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」の概要

    「NetApp Hybrid Multi-Cloud with VMware」の概要

ネットアップの今後の方向性

最後に、ネットアップ 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏が同社のソリューションポートフォや今後の方針について説明した。

同社では「エンタープライズストレージ」「クラウドストレージ」「クラウドオペレーション」の領域で製品・サービスを提供し、クラウド、マルチクラウド上のあらゆるアプリケーションに対応している。

近藤氏は「当社はデータセンターのための単なるストレージではなく、ONTAPを中核に据えたクラウド時代の進化形データマネジメントを提供している」と強調する。

  • ネットアップ 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏

    ネットアップ 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏

昨今ではクラウドにシフトする流れがあるものの、顧客によってはオンプレミス、ハイブリッド、クラウドファースト、クラウドネイティブとフェーズはさまざまあり、ITの運用もこのフェーズで変化しているという。

同氏は最新のネットアップにおける共通データプラットフォームについて「ステートフルアプリからクラウドネイティブ系のステートレスアプリまで対応している。仮想マシン、仮想基盤だけでなく、コンテナやKubernetesとも親和性は高く、あらゆるプロトコルに対応し、クラウドライクなオンプレミスシステムを提供するほか、オンプレミス級の堅牢性をクラウドに提供することが可能だ」と語気を強めた。

  • ネットアップにおける共通データプラットフォームのイメージ

    ネットアップにおける共通データプラットフォームのイメージ

同社は過去2年間で10社程度の企業を買収しており、これは“CloudOps”(クラウド運用)プラットフォームを進化させるためのものだという。クラウドの運用を効率化し、アプリケーションをアジャイル開発サイクルにしていくために、コスト最適化とオペwレーション最適化が必要となっており、CloudOpsプラットフォームのベースとなっている。

一方で、企業のアプリケーション開発チームではデータベースや開発ワークフロー、データパイプラインなどのOSS(オープンソースソフトウェア)の構築運用が複雑化し、運用サイクルのボトルネックとなっている。

そのため、同社ではアプリケーションデータデータプレーンでも効率的なマネージドサービスの提供を検討している。近藤氏は「インフラレベルの最適化、オペレーションの最適化に加え、アプリケーションデータプレーン、OSSミドルウェアの利用、運用の最適化まで拡張できればと考えている」と話す。

  • ネCloudOpsプラットフォームのイメージ

    CloudOpsプラットフォームのイメージ

そして、最後に「当社はオンプレミスのストレージだけでなく、クラウド主導、データ中心のソフトウェアカンパニーへと進化している。ただ、ストレージとしてのハードウェアは継続的に進化させて、販売していく」と述べていた。