2016年4月の電力小売自由化に伴い、これまでただ供給されるものだった電力は、利用者が“選ぶ”ものになった。安心安全の電力供給体制を構築・維持することに注力していた電力会社にとって、大きな変革の波が訪れた瞬間でもある。
近畿地方を中心に、発電事業や電力小売業などを行っている関西電力では、エネルギー事業を取り巻く環境の変化に対応し、さらなる発展を遂げるため、2021年~25年の中期経営計画を策定。その柱に、3つの変革プランから成る「Kanden Transformation(KX)」を据えた。そして、KX実現の鍵を握るのがDXだ。
市場競争が激化する今、関西電力はどのように変わろうとしているのか。そこでDXが担う役割は何なのか。計画開始から2年目に突入した今、同社 IT戦略室でIT企画部長を務める上田晃穂氏にお話を伺った。
エネルギー事業を取り巻く環境の変化に抱いた危機感
近年のエネルギー事業を取り巻く環境の変化を上田氏は「5つのDの進展によるもの」だと説明する。5つのDとは「Deregulation(自由化)」「Decarbonization(脱炭素化)」「Decentralization(分散化)」「Depopulation(人口減少)」「Digitalization(デジタル化)」だ。電力自由化や、カーボンニュートラル、ゼロカーボンへの流れに加え、従来、大規模な発電所で集中して発電・送電していた電力供給のスタイルも、小規模電力発電や蓄電池などに分散してきている。さらに、日本の人口減少に伴う電力消費量や労働力の減少も喫緊の課題だ。また、日本、ひいては世界全体で進むデジタル化に対応し、競争力を高めていくことがエネルギー事業にも求められるようになった。
これらの環境変化に危機感を抱いた関西電力はまず、2018年6月、トップダウンにより「DX戦略委員会」を立ち上げた。同年8月には、デジタル技術の知見を持つアクセンチュアと共同でK4 Digitalを設立。全体の戦略の方向を決める司令塔のDX戦略委員会、施策の検討や展開を行う各部門、施策実施に必要な技術支援をするK4 Digitalの三位一体でDXを推進する体制を整えたという。
並行して進められたのが、2021年~25年の中期経営計画の策定である。同計画には、エネルギー事業だけでなく、生活・ビジネスソリューションや情報通信といった新たな価値創出も目指すこと、これらの事業を進めるにあたり、イノベーション、デジタル化の推進を行うことが明文化された。