日立製作所(日立)は7月21日、仙台市と共同で、下水道管路施設の設計・施工業務の効率化に向け、レーダーやAI(人工知能)解析などデジタル技術を用いた研究を開始したと発表した。
同研究では、仙台市内の下水道管の移設工事を対象に、埋設物の位置や寸法などの情報を可視化・管理する日立の「地中可視化サービス」を活用し、設計・施工業務の効率化の検証を行う。設計段階での高精度な既設埋設物情報の可視化により、工期短縮や職員の業務負荷軽減を目指す。
下水道工事は、地下の埋設状況を正確に把握して行う必要がある。仙台市では設計・施工時に、インフラ事業者が管理する既設埋設物の図面をもとに設計図を作成し、管路が水平・鉛直方向に輻輳する(集中し混雑する)箇所や情報が不十分な箇所については試掘調査で配管位置を特定している。しかし、埋設物の実際の配管位置が図面と異なることや、工事中に予期しない埋設物が発見されることなどにより、設計変更や追加試掘が発生し工期遅延になることもしばしばあるという。
今回両者が開始した共同研究では、仙台市内の無電柱化工事の一環として実施される下水道管の移設工事において、「地中可視化サービス」を実地の設計・施工業務で活用する。具体的には、工事現場となる道路における下水道管路の図面などの情報を同サービスのプラットフォームに集約する。
また、現地調査でレーダー探査装置から取得する地中の画像をAI解析で可視化した3次元データを、同サービスのプラットフォームで統合し、埋設物情報を拡充する。管路情報が適正化され、精度が高い設計図を効率的に作成可能になることによる、追加試掘・設計変更の抑制効果や業務試行を通じた費用対効果などを検証するとのこと。
両者は共同研究に先立ち、2021年11月から2022年5月までの、仙台駅周辺で行われた下水道工事のデータを対象にサービスの有用性や効果検討を行っている。同サービスで可視化した3次元の地中データを、実際の試掘調査結果と比較した。可視化情報の活用により、試掘調査の前段階で設計情報の精度が向上することで、実地の現場状況との乖離により発生する追加試掘調査・設計変更(手戻り)の70%削減を見込めたとしている。
日立は今後、同共同研究によるノウハウを生かしサービス機能の拡充や、自治体が導入しやすいサービスモデルの確立、さらには民間企業への展開を進めていく考えだ。