豊橋技術科学大学(豊橋技科大)と東京大学(東大)は7月19日、ナノ構造を利用した構造設計により、ダイヤモンド量子センサの感度をさらに向上できることを示したと発表した。
同成果は、豊橋技科大 電気・電子情報工学系の勝見亮太助教、同・八井崇教授、東大大学院 工学系研究科の関野正樹教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、応用物理学会が刊行する応用物理学に関する全般を扱う欧文学術誌「Japanese Journal of Applied Physics」に掲載された。
窒素-空孔(NV)センタは、ダイヤモンド中に形成される点欠陥であり、優れた光学・スピン特性を有していることが知られている。また、理論上、ダイヤモンド中の集団NVセンタを量子センサとして利用すれば、高感度な磁気検出が室温において可能となることから、次世代の高性能磁気センサとして期待されている。
しかし、これまでに報告されてきたNVセンタに基づく量子センサは、超伝導量子干渉計といった既存のセンサに比べると感度が低いという課題を抱えていたという。NVセンタからの発光検出効率を向上させることができれば、磁気感度を改善することは可能と考えられているが、ダイヤモンドは固い物質であり、その加工は技術的に容易ではないことから、集団NVセンタの発光取り出し効率向上に向けた設計は、これまで行われてこなかったという。
そこで研究チームは今回、高感度な磁気検出が可能なダイヤモンド量子センサの実現に向けて、NVセンタの発光強度増強とその高効率な発光取り出しを可能にする共振器デバイス構造を提案することにしたとする。
この構造を利用すると、NVセンタの磁気感度をさらに向上することが可能となり、既存の超伝導量子干渉計などのセンサと同等の数十fT/Hz1/2の感度が期待されるという。さらに、デバイスサイズが数μmと小型なため、必要となる光パワーの低減も可能になるともしている。
なお、今回の設計デバイスの作製は、既存のダイヤモンド加工技術でも可能だと研究チームでは説明しており、最終的には、今回の設計をほかの集積技術や光通信技術と組み合わせることで、次世代の実用的な量子センサを開発できると考えているとしている。