名古屋大学(名大)は7月15日、信号の形や色に合わせて手や足で反応する実験により、高齢者は大学生に比べて、反応の切り替えや抑制を担う前頭葉の活動を必要とし、多くの脳活動を必要としていることを示したことを発表した。
同成果は、名大大学院 情報学研究科の川合伸幸教授らの研究チームによるもの。詳細は、行動神経科学に関する全般を扱う学際的な学術誌「Behavioural Brain Research」に掲載された。
高齢者のブレーキとアクセルのペダル踏み間違い事故が大きな社会問題となって久しいが、公共交通の少ない地域においては、高齢者が自ら運転しなければ生活できないため、免許を返納するわけにはいかない場合もあることが課題となっている。
完全自動運転が実用化されれば、こうした問題が解決されることが期待されるが、その実現にはもうしばらく時間が必要とされていることから、自動車メーカーは現状、衝突被害軽減ブレーキや、ブレーキとアクセルを踏み間違えた際の発進抑制機能など、部分的な自動運転技術である先進運転支援システムを市販車に搭載することで対応を試みている。しかし、自動車は決して安価ではないことから、すべての高齢ドライバーがそうした機能の車種を利用できるわけではないほか、より安価な後づけのペダル踏み間違い防止装置も発売されているものの、まだまだ普及が進んでいないという課題がある。
2016~2022年の248件のブレーキ踏み間違い事故のうち、約57%の141件が75歳以上の高齢ドライバーによるものだったという。高齢ドライバーによる事故が多いということは、認知や判断が75歳未満のドライバーと比較して遅い可能性が考えられるが、これまでの高齢者が反応を抑制する実験によれば、若者と同等の成績を示すことが確かめられているという。ただし、その際、高齢者はより多くの前頭葉の神経活動を要することなどは知られていたとする一方、足での反応についても、同じように多くの神経活動を要するかどうかは不明だったとする。