東北大学は7月15日、細石刃を特徴とする後期旧石器時代の山形県角二山遺跡を2017~2020年に再発掘し、黒曜石でできた細石刃や細石刃核、彫刻刀形石器、剥片、砕片などの得られた石器を蛍光X線元素分析したところ、黒曜石には北海道白滝産と秋田県男鹿産があることを確認したとするほか、炭化物の放射性炭素年代測定からも較正年代で約1万8000年前の所産であることが明らかになったと発表した。
同成果は、東北大大学院 文学研究科 考古学研究室の鹿又喜隆教授らの研究チームによるもの。詳細は、石器時代の人口移動などを扱う書籍「Quantifying Stone Age Mobility」に掲載された。
山形県角二山遺跡は1970年に最初の発掘がなされ、石器の製作技術は北海道に多く見られる湧別技法であることから、その技術が東北日本に南下したものと考えられてきた。しかし、南下の年代は不明であったという。
そうした中、研究チームは今回の再発掘にて黒曜石でできた多数の石器を発掘することに成功。蛍光X線元素分析装置を用いた黒曜石産地分析を行ったところ、北海道白滝産の黒曜石製石器が67点、秋田県男鹿産の黒曜石製石器が22点あることを確認したとする。
前者は北海道に見られる湧別技法などの細石刃製作技術で作られ、後者は本州に見られる技術で作られたものであるとするほか、在地の頁岩を用いて湧別技法によって作られた石器は、出土総数の大多数を占めていたという。
なお、これらの石器は分布範囲を違えながらも、同一層から出土したものであり、各石器集中地点に伴う炭化物の放射性炭素年代測定からは、それらが約1万8000年前(暦年較正)の所産であることも判明。こうした状況から、北海道から本州へと渡った移民が、男鹿半島産の黒曜石を持った在地の人々と行動を共にし、遺跡のある土地に暮らしていたことが考えられると研究チームでは説明している。