中国の半導体・ディスプレイ市場動向調査会社であるCINNO Researchによると、2022年5月における中国本土でのスマートフォン(スマホ)用アプリケーションプロセッサの出荷量は前年同月比約19.7%減、前月比約8.6%増、の約1912万個となったという。
この動きについてCINNO Researchは、エピデミックの影響から回復していないことに加え、スマホの高機能化に伴い、買い替え需要があまり喚起されていないことを挙げている。
出荷数をブランド別で見ると、トップはMediaTekで、前年同月比3.3%減、前月比約15.1%増の約840万個、2位はQualcommで650万個、3位はApple(iPhone向け)で約300万個となっていおり、この上位3社だけで中国市場のシェア94%を握っているという。4位には中国の地元企業であるUNISOC(紫光集団傘下)が前月比約9.4%増の50万個、5位には同じく中国勢のHiSilicon(Huawei子会社)の40万個となっているが、上位3社と比べると文字通り桁違いに少ない状況となっている。
2000元(約4万円)以内のエントリーレベルのスマホ向けSoCは、中国本土におけるMediaTekの主要市場となっており、5月はそうしたローエンドスマホ向けSoCが、同社の中国本土向け総出荷量の約71%を占めたという。一方、 Qualcommは2000〜3999元(約4万~8万円)のミッドレンジスマホ向けSoCが約46.3%を占めたほか、2000元以内のローエンドスマホ向けSoCも約41.8%となっており、MediaTekと比べて、多様化している様子がうかがえるという。
注目ポイントは、中国本土のスマホ市場におけるHonor(元Huaweiのサブブランド)の販売台数が約320万台となり、月間販売台数で1位を獲得した点だという。この結果、搭載されているUNISOCのスマホ向けSoCの出荷数量が伸び、HiSiliconの出荷台数を上回ることとなったという。一方のHiSiliconは、2021年第2四半期には240万個のスマホ向けSoCを出荷していたが、米国の規制の影響で先端プロセス製品の製造委託ができなくなっており、そうした影響から出荷数を大幅に減らす結果となっている。
なおCINNO Researchによると、中国のスマホ市場は5月に安定の兆しを見せたものの、市場回復の勢いはまだ不十分であり、大手メーカーの在庫水準が高く、消費者の買い替え意欲が低い状況下にあるため、市場は調整段階にあるとみられるという。2022年通年を見ても、下半期に根本的な回復は見込めないことから、そこに搭載されるSoC市場もその影響を受けるものとCINNO Researchは予測している。