三菱電機は7月19日、基幹光ネットワークで用いられる光送受信器に適用する新たなデジタル信号処理技術として、光通信の大容量かつ低消費電力化を実現する「圧縮シェイピング」技術を開発したことを発表した。

同技術は、通信トラフィックのデータ状況に応じて「0」と「1」のビット列からなるデータのうち、「0」の割合が多いデータをエネルギーの小さい信号点へ自動的に割り当てる「シェイピング」と、それと同時にデータ圧縮を行う手法だという。

  • 「圧縮シェイピング」技術の適用例

    「圧縮シェイピング」技術の適用例

基幹光ネットワークは情報化社会を支える通信インフラの一つとして、大規模データを集約して長距離伝送するために用いられている。近年は新たな生活様式への移行にともなって通信トラフィックが増加しており、大容量かつ低消費電力の通信が求められている。

一方で、データ通信の大容量・高速化が進むに連れて信号伝送時のひずみや雑音などの影響が増加し、通信トラフィックのデータを構成する0と1のデジタル符号が反転する符号誤りが顕著となる。この際に、誤りを訂正する符号処理には多くの電力が消費されるため、大容量化と低消費電力化の両立を妨げる要因となる。また、符号誤りを減らすために信号点間同士が重なりにくいように信号点間距離を広げると、全体のエネルギーが大きくなるため光ファイバー通信の制約を満たさなくなる課題もあった。

こうした背景を受けて同社は、「0」の割合が多いデータ(無効データ)をエネルギーの小さい信号点に割り当てる「シェイピング」を行うことで、全体のエネルギーを抑えたまま信号点間の距離を離し符号誤りを減少させるとともに、データ圧縮も同時に行う「圧縮シェイピング」技術を開発した。

これにより、誤りを訂正する符号処理の電力消費を従来と比較して8分の1以下に低減し、光送受信器の大容量化も見込めるという。同社によると、同技術を汎用の大規模集積回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)に実装して、毎秒最大1.6テラビット超の光通信用符号処理速度での実証に成功したとのことだ。