2022年7月8日夕方に広島地方で発生した豪雨の影響でMicron Technologyの広島工場にて停電が発生。7月11日(米国時間)に同社は、電源が一時的に喪失したこと、すでに生産を再開させ、徐々に生産量を増加させていく見込みであることを公表した。

同社では、停電発生時に処理中だったウェハをすべて調査し、それらのウェハが会社の厳しい品質基準を満たしているかどうかを判断しているところだとしており、同社の2022年会計年度の第4四半期(2022年6~8月)から2023年度第1四半期(2022年9~11月)にかけて、ウェハスクラップによる生産量の損失と生産再開後の生産能力低下に伴うコストへの影響があると予測している。また同社では、短期的な供給への影響を調査しており、同工場における既存の在庫と広島以外の海外DRAM製造拠点ネットワークを利用することで、顧客の要求を満たすように取り組んでいるともしている。

TrendForceの分析では市場に対する影響は軽微

台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceはこの停電発表を受けて、7月13日にMicron広島工場での停電の影響を分析した結果を公表した。

それによると、同工場の月間ウェハ投入数量は、Micron全体の月間総DRAMウェハ投入数量の約30%を占めており、世界全体のウェハ投入数量の約7%を占めるという。現在の1Z-nm(第3世代10nmプロセス)プロセスが同工場の生産能力の50%以上を占め、次いで1Y-nm(第2世代10nmプロセス)が約35%を占めているという。

停電発生時、製造装置の電源は無停電電源装置に瞬時に切り替えられたが、電圧降下のために、製造装置は後に初期化と点検検査を必要となったほか、停電は約5〜10分間ほどであったため、生産能力への影響は限定的とTrendForceでは分析している。

また同工場は開発センター的役割も担っており、次世代の1β-nm(第5世代10nmプロセス)プロセスの開発・生産も含まれているという。

TrendForceでは、ロシアのウクライナ侵攻と年初以来のインフレによる世界的な家電需要の低迷が、さまざまなメーカーの間で高水準のメモリ在庫を生み出していることを確認しており、そうしたこともあり、今回の停電の市場に対する影響は比較的小さく、Micronとしても積み増しておいた在庫でクライアントのニーズを満たすことができるため、DRAM市場の全体的な需要と供給への影響についても軽微との見方を示している。

なお、TrendForceでは、市場の状況が即座に反映されるスポット市場についても、停電以降の需要の増加は見られず、顧客の緊急注文に対する市場の反応も見られないとしており、今回の停電で現在の供給過剰状態が逆転することはなく、2022年下半期の当初の価格予測を変更する必要はないともしており、従前の予測通りDRAM価格は2022年第3四半期(7~9月期)に約10%下落する見込みのままとしている。