Lam Researchは7月12日(米国時間)、独自のEUVリソグラフィ用ドライレジスト技術に用いるプリカーサ(前駆体)について、半導体材料メーカーである三菱ケミカルグループの米国子会社Gelest、および米Entegrisの2社と提携し、顧客へ供給すると発表した。
Lam ResearchのEUV向けドライレジスト技術は、もともとASMLおよびimecと共同開発したもので、従来の液体レジストを用いたスピンコート方式とは異なり、CVDによる固体レジストの堆積を用いる新方式であるため、プリカーサが必要となっている。CVDで製膜したレジスト層のEUV光吸収率が従来の液状レジストより数倍高く、露光時の解像度の向上により生産性(スループット)や歩留まりが改善され、レジスト材料の使用量が従来比1/5~1/10削減でき、コスト低減が期待できるとしている。また、レジストの現像もドライ化することでウェット現像時に発生する現像液やリンス液の表面張力によるレジストパターン倒壊が防止できるというメリットもあるとする。
今回の3社のコラボレーションは、ドライレジスト技術のエコシステムを拡大させ、プリカーサのデュアルソース(出荷業者の複数化)による供給により、グローバル市場での安定供給を確実にするとLam Researchでは説明している。
Gelestは、三菱ケミカルの米国子会社Mitsubishi Chemical Americaが2020年に買収した特殊化学製品メーカー(米国ペンシルベニア州)で、半導体用プリカーサの原材料である金属化合物、樹脂添加剤用途の有機化合物およびそれらを組み合わせた複合化合物の領域において分子設計・合成技術を得意としている。
高NA EUV露光向けドライレジストプロセス開発でも協業
また、この3社は、高開口数(high-NA:NA=0.55)EUVパターニングに向けた費用効果の高いEUVドライレジストソリューションの開発も協力して推進していくともしている。高NA EUV露光装置は、現在、ASMLが開発中で、試作機を2023年中にimecとの共同ラボに設置する予定のほか、2024年にも最先端プロセスを必要とする半導体企業に納入、量産機については2025/2026年ごろに発売する予定としている。
EUVリソグラフィは、今後のデバイスのスケーリングと半導体技術の進歩を実現するために必要となるパターニング技術として認識されており、ドライレジストは、高NA EUVの焦点深度が浅くなる問題を軽減するために必要な、高い耐エッチング性と調整可能な堆積厚みを薄くすることに貢献するとLam Researchでは説明している。