大阪大学(阪大)は7月12日、顔認識用AIを用いて多くの人々の顔の類似度を客観的な数値で算出し、信頼性評価のスコアとの関係を調べることで、人は同性の第一印象において、自分に似ている顔ほど信頼できると評価することを確認したと発表した。
同成果は、阪大大学院 生命機能研究科(FBS)の中野珠実准教授らの研究チームによるもの。詳細は、人文・行動・社会科学に関連するすべての分野を扱うオープンアクセスジャーナル「Humanities and Social Sciences Communications」に掲載された。
人は、他者と自分を合成した顔に対して、信頼性を高く評価したり、親しみを感じることがこれまでの研究から報告されていた。しかし実社会においても、自分の顔に似ているかどうかに基づき、見知らぬ他者の第一印象を決定しているのかどうかはわかっていなかったという。その理由としては、大勢の顔の中で、特定の二者の顔がどのくらい似ているのかを客観的に評価することが難しいという課題があったためだとされている。
そこで研究チームは今回、高い顔認識性能を持つ最先端の深層ニューラルネットワークを活用することで、日本人大学生230名(男性115名、女性115名)の顔の類似度を客観的な数値で算出し、信頼性に関する第一印象のスコアとの関係性を調べることにしたという。
その結果、同性の顔の印象を評価するときは、自分に似ている顔ほど信頼性を高く評価する傾向があることが確認されたとする一方、異性の顔の印象を評価するときには、自分に似ているかどうかは、信頼性の評価に影響を与えないことも判明したとする。
これらの結果について研究チームでは、実生活における社会的判断において、「自分に似ているか」が重要なファクターになっていることを実証するものだと説明している。
なお、今回の研究成果について研究チームでは、信頼性の第一印象が重要となるP2Pレンディングの相手探しやSNSのメンバーマッチングにおいて、顔の類似度に基づいたパーソナル提案の技術への応用が期待されるとしているほか、実社会において、人がどのような社会的判断戦略を用いているかを解明することにも貢献することが期待されるとしている。